NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

『THE お姉チャンバラ』 安さと自由

 世間様より一ヶ月ほど遅れた話題になってしまうが、SIMPLE2000シリーズ Vol.61 THE お姉チャンバラPS2/D3パブリッシャー)を暇なときにプレイしている。
 このタイトルだけだとお姉ちゃんがチャンバラするゲームに思えるが(それはそれで妙なゲームだが)、ちょっと看板に偽りありで、正確にはチャンバラではない。なぜなら敵は別に刀で攻撃してくるわけじゃないからだ。それどころか人間でさえなく、出てくる敵はみんなゾンビ。プレイヤーは荒いテクスチャが貼られた同じような風景のダンジョンに次々と湧いてくるゾンビどもをばっさばっさと斬りまくるのだ。ゲームの内容としては、これ以上でも以下でもない。エネミーが武将からゾンビになった、『三国無双』のあまり出来の良くないフォロワーだと考えればほぼ正解だ。
 だからゲームそのものはあまり褒められたものじゃないが、それでもこのゲームが妙な魅力を持っているのは、ひとえに企画の勝利だろう。そう、プレイヤーが操る「お姉ちゃん」は、ビキニにテンガロンハットをかぶり日本刀を持っているのだ! ビキニ・テンガロンハット・日本刀・ゾンビ……なんだろうこのボンクラさは。
 そんなお姉ちゃんがゾンビを斬ると、一昔前の洋ゲーのように過剰な血しぶきがあがり、腕や首がもげたり下半身だけになったりする。このゲームで最もエロティックでインモラルなのは、お姉ちゃんがちゃんと返り血を浴びて汚れるところだ(だんだんお姉ちゃんの肌のテクスチャが血まみれになっていく)。しかもこの汚れは「穢れゲージ」という形でゲームシステムと直結し、あまりにも大量の返り血を浴びて「穢れゲージ」がマックスになると、お姉ちゃんは暴走してしまうのだ(暴走中はライフが減るが、攻撃力・移動スピードが極端に上昇する)!
 お姉ちゃんの身体だけではなく、日本刀のほうにも血糊ゲージがあり、途中で血を拭わないと切れ味が鈍っていく。日本刀の血を拭う動作はガンシューティングゲームのリロードにあたるが、この動作を行っているあいだはスキが多く、無防備になる。ところがゾンビに連続攻撃を当てている最中にリロードを行うとスキのあるモーションが省略され(=クイックリロード)、続けて攻撃できてなおかつ「絵になるアクション」になる。ゾンビを斬る→もう一回斬って刀についた血をはらう→返す刀で次のゾンビをまた斬る、といった具合。ここらへんのアクションのかっこよさはけっこうよくできていて、やることといえば出てくる敵を斬るだけしかないこのゲームを飽きずに続けられるだけの爽快感がある。

 さっきも書いたとおり、ゲームの出来としては今ひとつ、ふたつといったところ。ネットでの評判は、ゲームそのものの評価としては正直なところ持ち上げすぎなんじゃないの、という気がしないでもないが、この値段だからこその高評価と考えれば納得できる。例えば、第弐齋藤 | 土踏まず日記

 んー、でもこの面白さが計算されたものだ、という気は、あまりしないんだよな。
 『地球防衛軍』的な、ゲームそのものが己の地位を押し上げている面白さ、というのではない。
 「SIMPLE2000」っていうレーベルの力が、このゲームを「面白い」のほうに押し出してる。
 そんな気がする。
 「SIMPLE2000」に投じられた銭って完全に「捨て銭」でさ、よっぽどのことがないと「もう帰ってこないだろうなぁ?」と思ってるでしょう? それがプラスになって帰ってくる! ってんだから、これは嬉しいでしょう。
 6000,7000円払ったんなら、俺らは「サービス」を求めてしまうけど、
 1000円2000円なら、それがただの「ゲームへの挑戦権」でもぜんぜんかまわない。
 っちゅうのが、たぶん、ふつうの大人ゲーマーの心持ちだ。 とは思うでス。

 という評価には同意。この時代、2000円という価格のゲームではないと獲得できない「自由」ってのがあるとすれば、『THE お姉チャンバラ』にはその自由がある。それは制作者側の「こんなふざけた企画思いついたー! でも思いついたネタを煮詰めてソフィスティケートしたりせず勢いがいいうちに出しちゃえー! 2000円の商品だし早くて安いのが命ー!」という“完成度”からの自由であり、プレイヤーにとっての「あー、あまり出来はよくないけど、妙に気になるところはあるし2000円だし目くじら立てずに面白がるかー」という“評価”からの自由だ。

 まあとにかく、『キル・ビル』とか『フロム・ダスク・ティル・ドーン』とか『ブレインデッド』とか『修羅雪姫』(しかも釈由美子のほう)とか、あるいはラス・メイヤーの映画なんかを思い出すような、お前らボンクラどもには強烈にプッシュだ。個人的にはプレイヤーキャラの武器が日本刀のほかにも何かあるとモアベターだった。チェンソーとか。もし続編があるとすれば、ぜひ『女切り裂き狂団チェンソー・クイーン』のビデオジャケットみたいなゲームにしてほしいです(映画の内容は別に参考にしなくていいです)。

 こちらはお姉ちゃんのコスチュームの元ネタと目される蜷川実花の写真集。

mika

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