NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

冬コミをワイヤレス通信の巨大実験場として考える

 初代ゲームボーイが発売されてまもない頃にどこかで聞いた話。お盆の帰省ラッシュで込み合った電車が、停電か事故のせいで駅に足止めをくらうことになった。一時間たっても二時間たってもなかなか復旧の目処はたたない。そんな中、キオスクで売られていた(らしい、当時は)ゲームボーイ本体と対戦ケーブル同梱版『テトリス』、そして電池が飛ぶように売れていったという……。
 明日は早起きしてコミケ行きますよ、死ぬ気で並んで『ひぐらしのなく頃に 解』をなんとかゲットしてきますよ、ホント、コミケは地獄だぜ!とか盛り上がってる職場の後輩と話しながら、往時のゲームボーイの勢いを示すそんなエピソードを思い出していた。それで、コミケで並んでいる人たちのところに行ってNDSPSPの対戦できるゲームを売り歩いたらかなり売れるんじゃねえかなー、本体だって捌けるかもしれないよなー、とかそういう思いつきを口にしたんだが、これけっこうほんとに売れそうだ。
 コミケには行ったことがないんですが、今日行った方はどうだったでしょうか? 私が気になるのは、ワイヤレス通信機能を搭載した携帯ゲーム機が2機種も発売されたこの冬、その新ハードを持っている人の割合が日本中のどこよりも高くなるであろう冬コミという時間・場所において、ワイヤレス通信はどのように使われていたか? ということです。列に並ぶ面識のない人々のあいだで、NDSピクトチャットや『大合奏!バンドブラザーズ』などの1カートリッジダウンロード対戦可能なソフト、PSPの『リッジレーサーズ』は、しっかりと「愉快な暇つぶし」として機能していたでしょうか?
 NDS/PSPの新機能としては、タッチパネルや2画面、超綺麗な液晶などの話題に隠れて今ひとつ地味だけど、通信ケーブルが必要だった対戦/コミュニケーションがワイヤレスになったことの意味は大きい。かなり大きい。だが友達同士でプレイするなら、単に「便利になった」だけだ。真の革新は、その場にいる見知らぬ人同士が(それも大勢で!)ほんの軽い気持ちで通信対戦/コミュニケーションを始めたときに起こるはずだ。
 両ハードが発売されてから、ぽつぽつとその種の体験談を見ることはあるが、まだ「ハプニング」を抜け出していない。ちょっと大げさな話かもしれないが、2004年冬のコミケこそ、携帯ゲーム機によるワイヤレス通信の、世界初の巨大な実験場として機能しうる時間・場所なんじゃないだろうか。
 「ハプニング」から「巨大イベント」を経て、やがてごく平凡な「日常」のレベルまで、携帯ゲーム機のワイヤレス通信が浸透と拡散をしてくれると、きっと考えてもみなかった面白いことができるんじゃないかなー、と妄想する2004年の暮れなのでした。