ファイブミニのCMで宮崎あおいと蒼井優が共演してるじゃないですか。風呂入ってるやつ。あれはあざといなー。あざいといあざとい。あーやだやだ!(妙にはしゃいだ声で)
宮崎あおいと蒼井優は『害虫』という映画で共演してるんだけど、正直なところ僕はこの映画、あんまりピンとこなかった。これもまたあざとい映画で、別に嫌いじゃないけどちょっとなー、と思ってた。見てすぐの頃は。……だけどそれから時間がたっていくうちに、『シャルロット・フォー・エヴァー』に対して感じているような、偏愛じみた気持ちがむくむくと湧き上がってきたんだ! つまりこの映画は、クソ暗くて、つまんなくて、変態っぽくって、最低で、だからこそ最高の変態アイドル映画だ! って具合に。暑っ苦しく。
見てすぐの頃に別の場所で書いた感想を転載。
『害虫』……アンファンテリブルもの。宮崎あおいがものすごい勢いで不幸になってく話。しかも役名がサチコ。サチコの幸はどこにあるっていうかないです!ごめん!というストーリーだ。
いやしかし、サチコっていう役名もそうだが、なんかこれめちゃくちゃベタなストーリー展開で驚く。ほとんどギャグだ。特にラストのあの古典的なアレはさすがに如何なものか。
ただそういうベタベタな不幸話はそれなりに意図的なもので、ベタな不幸に巻き込まれまくる宮崎あおいが(予告編のキャッチコピーにもあるように)泣いたり叫んだりといったことはほとんどせず、常に不貞腐れたような表情を浮かべているのを撮ることに映画の主眼はある。というかそれしかない。それだけだ! 宮崎あおいの不貞腐れた顔を撮りたいという欲望しかここにはない! いやそれは言いすぎだ。ほかにも、宮崎あおいがブチキレて、にっこにこ笑いながらモロトフカクテルを作るところを撮りたいという欲望や、でも投擲したあとに怖くなってわななくところを撮りたいという欲望もある。あと女子中学生のハイソックスを履いた足元を撮りたいという欲望とか。
つまりこの映画はかなり本気度数の高い「少女」映画だった。不穏だ。個人的には、まあちょっと落ち着けよと思った。あとこっちにも蒼井優が出てるが精彩を欠く。
「こっちにも蒼井優が」ってのは、この直前に『花とアリス』を見たので。ついでだからこっちも転載。
『花とアリス』……あらすじだけ知ってて、もっと「少女幻想」ものというか、「ボクたちの好きな少女マンガ」っぽいセンを狙った映画なのかと思ってたらぜんぜん違って、シチュエーションコメディーだった。これはとても愉快な映画だ。
明らかに実力のある二人の女優・鈴木杏と蒼井優が、映画の主導権を巡ってドタバタを繰り広げる。序盤の主人公は鈴木杏なのだが、中盤のあるシーンを境に蒼井優のほうに映画的見せ場が多くなるため、鈴木杏としては分が悪い。
その鬱憤からか、先輩男子との三角関係が浮き彫りになる砂浜のシーンで、「ぅうーッ!」といううなり声とともに蒼井優に掴み掛かっていく鈴木杏の突発的な迫力は見ものだ。ストーリー的には「先輩を渡さない!」だが、同時に「この映画を渡さない!」という感じ。いつもながら力演だ!
一方の蒼井優は、僕この人リハウスのCMでしか知らなかったんだけどすごい人ですね、友達といるとき・彼氏といるとき・親といるとき・知らない大人といるとき、でぜんぜん違う態度・表情・しゃべり方・仕草をする。これが「思春期の少女の移ろいやすさ・きまぐれ」みたいなクリシェを軽々と逸脱するような芝居なので、すごく躁的で素敵。ほとんどストーリーが解体する一歩手前なんだが、うまいことまとめあげてて違和感なくさらっと見せてる演出はよかった。『Love Letter』のときから思ってたけど、岩井俊二は明らかに破綻しているメタメタなストーリーをあんまり違和感なく見せる力に長けた監督だ。ていうかそれはどんな力だ。あーあれか、シチュエーションコメディをまとめあげるのに適した力かな。
そんなわけで実は「少女」がどうこうじゃなくって、力のある若い女優さん2人の芝居を見る映画だった。いい映画だった。
二本続けて見て、そのときは『花とアリス』が自分内評価は断然高かったのだけど、今現在、(映画としての評価は別として)印象が強く残っているのは『害虫』だ。塩田明彦恐るべし。本気度の高い奴が最終的に勝つ。『月光の囁き』映画版も見るべきだろうか。原作がかなり好きなので、どうしても比べてしまいそうなんだけど。
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