NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

『頭文字D THE MOVIE』は不思議アジア空間

 今週で終わってしまうというので、『頭文字D THE MOVIE』を見てきた。有名な走り屋バトルマンガを原作に『インファナル・アフェア』の監督コンビが実写で描く香港映画だ。だが、舞台は日本。登場人物の名前も原作どおり。そのほとんどを香港の俳優が演じ、日本の声優が吹き替えを行う。
 そういうわけだから、映画内に実に不思議な空間が発生していた。昔の日活の無国籍アクションとも違う、アジアのいろんな場所の空気をパッチワークしたような空間だ。原作は一見派手な題材だが、中身は「峠を攻めることしか取り得がない二十代前半の若者」たちのけっこうしみったれた生々しい「地方都市」グラフィティなので、この実写版映画の「日本の地方都市」としてのリアリティの欠如はかなりの違和感だ。正直に言って物語を薄っぺらくしている。アンドリュー・ラウ&アラン・マック監督お得意のほとんど意味もなくスタイリッシュなカットワークもそれに拍車をかけている。
 だが、原作は原作、映画は映画として割り切ってみると、けっこう楽しい娯楽作だった。峠でのバトルシーンの映像は、カット割り・カメラアングル・そしてもちろんカースタントも含めて素晴らしく迫力があるし、登場人物のキャラクター造形もマンガ的で楽しい(それが原作のマンガとはまったく違う「マンガ的」だったとしてもだ)。また、さっきアジアのいろんな場所の空気云々と書いたが、樹のキャラクター造形と、登場人物がすぐに「香港映画ゲロ」(あの白いやつ)を吐くところだけは、ザッツ香港電影!って感じでとても笑える。
 あと、原作のそこかしこに漂う同性愛的な雰囲気が、この映画ではかなり拡張されてたよ。中里毅(アイドル顔のイケメンに!)はことあるごとに高橋兄(弟は出てこない)に対して「俺とやらないか?」「なあ、いつ俺とやるんだ? すぐに始めようぜ」「おまえとやりたいんだ」とか一方的にラブラブだし、原作のクールな理論家ではなく甘いマスクでいつも微笑んでいるキャラとして描かれる高橋兄はやたらと拓海にベタベタと親切にしてくれるし。人からもらったのに未読だった『男たちの絆、アジア映画 ホモソーシャルな欲望』を家に帰ってから読み始めました。
 最後に、これは声を大にして言いたいんだが、茂木なつき役の鈴木杏が頑張ってダイエットして水着姿も披露してて、これがなんつうかとってもエロかった! 海に行ったあとに車の中で拓海とキスするシーンで着てた服とか、なんか妙にエロかった! 初めて鈴木杏にエロを感じたね俺は。