NGM+その他の欲望

Nightcap Gamer's Memopad, そしてその他諸々についてのサムシング。

瞬く光の中の小さな者たち 『ちっちゃいエイリアン』



 というわけで、忘れないうちにゲームボーイカラー専用ソフト『ちっちゃいエイリアン』について書いておこう。
 『ちっちゃいエイリアン』は、ポケモンの共同制作で有名なクリーチャーズから2001年初頭にリリースされたゲームだ。時あたかもゲームボーイアドバンスの発売前夜。そんなときに「ゲームボーイカラー専用」として出すという、時代に逆行したソフトだった。
 なぜ「ゲームボーイカラー専用」かというと、GBカラーにのみ搭載されている赤外線ポートを使用してのギミックが、ゲームの中心にあるからだ。赤外線ポートはGBカラーで初めて搭載された機能だが、GBAでは廃止された。この赤外線ポートを使っての遊びがゲームのキモなので、残念ながらGBAでは起動は可能なものの、「遊ぶ」ことはできない。

このゲームは、ちっちゃいエイリアン(以下ちゃいリアン)の体についたダークマター暗黒物質)を集めて宇宙を救う新感覚ゲーム。
光の中にいるちゃいリアンを、付属のスペクトラムコミュニケーターで探しだそう!
ちゃいリアンの動きに合わせてブルブル震えるリアルな振動にやみつきかも…。
つかまえたちゃいリアンは、赤外線通信で友だちと交換したり、対戦したりすることもできるよ!
http://www.creatures.co.jp/products/chailien.html

 クリーチャーズのちゃいリアン紹介ページからの引用。そう、このゲームは人工的な光に潜む宇宙からの微小な訪問者「ちっちゃいエイリアン」を捕獲・観察するツールなのだ! GBカラーの科学力を駆使し、電気スタンドや蛍光灯の光の中からちゃいリアンを探しだせ!……というのが基本設定。
 GBカラーの赤外線ポートを蛍光灯に近づけスキャンを開始する。画面には何やら意味ありげな波長が表示され、ビープ音の高低でちゃいリアンが近くにいるかどうかを知らせてくれる。うまいことちゃいリアンをスキャンできると「ちゃいリアンを発見しました!」との音声とともにカートリッジが振動する! あとはAボタンを必死に連打してちゃいリアンを捕獲!!
 こうして集めたちゃいリアンとミニゲームをしたり、ちゃいリアンを合成したりというのがいわゆる「ゲーム」の部分なんだけど、はっきりいってそっちはまあ、ごくごく普通のでき。いや、バリエーションは多いしローファイな雰囲気はなかなかいいんだけど、厭らしい言い方をすれば予想の範囲内の展開ばかりだ。
 だが、「ちゃいリアンがいそうな光を探して部屋の中をうろうろする」という行為自体がとても楽しい。そのあとの「ゲーム」はむしろオマケと言ってしまってもいいかもしれない。
 もちろん僕もいい年齢なので、蛍光灯のような「光」だけではなくテレビやエアコンのリモコンでも容易にちゃいリアンを捕獲できることはわかっている(実際、ゲーム中でもリモコンに言及している)。だが、それだとなんの風情もないのだ。ちゃいリアンは「光」の中にいて、その人工の光が届く場所でGBカラーを探知機のように慎重に動かしながら、手探りで未知の小さな生き物を探す感覚こそが、このゲームの「ゲーム」なのだ。少なくとも僕はそうやって遊んだ。
 ゲームが画面の中だけに留まらず、我々の側――画面の外に侵食してくる感覚。プレイヤーキャラクターではなく我々プレイヤー自身が「ゲーム」の側に取り込まれる感覚。大げさに言えばそういうことになるけど、プレイしながら僕が感じていた快感はそのあたりにある。
 このゲームの他にも、赤外線受信機やその他の読み取り機構で現実の生活圏内にあるものをスキャンし、キャラクターをゲットするタイプのゲームが(GBカラーに限らずスタンドアロンの玩具でも)同じ頃に同時多発的にあった。だが、バーコードバトラーシリーズやモンスターファームシリーズのような、「バーコード」「CD」というあまりにも具体的で即物的すぎるスキャン対象に比べて、本作の「人工的な光」の持つ曖昧さやハッタリ感、なんならセンス・オブ・ワンダーと言ってしまってもいいけど、こいつはとっても素敵だったと思う。
 同梱された「ちゃいリアンを見つけやすくなる」とかいう効用がある*1スペクトラルコミュニケーター」(リンク先の写真参照)も含めて、GBカラーというハード自体をギミックとして使い切った製品だ。開発者の田中宏和氏もこう言っている。

 近々、ゲームボーイアドバンスが発売されますが、なぜ、ゲームボーイアドバンス用として制作されなかったんですか?

田中宏和氏 それは単純にゲームボーイの形です。だって、横長の探索機はおかしいでしょ。「ちっちゃいエイリアン」はゲームボーイカラーの縦長の形があってこそ実現したソフトなんです。やっぱり形ありきというか、そう言ったところから来ていますね。
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20010214/creat2.htm

 このゲームと『コロコロカービィ』はGBカラーというハードでしかできないプレイ感覚を持っていると思うので、GBASPを二台持ってる今でもまだGBカラーは手放せない……んだけど、赤外線ポートが反応しなくなっちゃったのでもうちゃいリアンは見つけられないよ。ああ、瞬く光の中の小さな者たちよ。


【参考リンク】
「MOTHER」からポケモンアニメ音楽 そして「ちっちゃいエイリアン」田中宏和氏インタビュー【前編】
「MOTHER」からポケモンアニメ音楽 そして「ちっちゃいエイリアン」田中宏和氏インタビュー【後編】

ちっちゃいエイリアン

ちっちゃいエイリアン

*1:実際のところ、別になんの効果もない。雰囲気だけ。