今年の春先に話題になった佐藤優『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』を遅ればせながら読んだ。数年前の鈴木宗男騒動に関係して逮捕された元外務省職員が、事件の裏側と日本の外交・情報戦略の現場について語った本だ。評判に違わず、これがクソ面白い。日本の外交に関する知識があまりないので、出てくるエピソードがどれも興味深く、新鮮だった。これがリアルスパイかあと、ぽわわーんとしてしまったよ。一級の政治スリラー小説を読んでいるような気分だった。 で、こんなに面白いんだから、これはそれなりにフィクションなんだろうな、とも感じた。いや、フィクションは言いすぎとしても、情報のプロが仕掛ける新たな情報戦の一環ではあるのだろうから、まあそこらへんはある程度さっぴいて読んだほうがいいんだろう。でも、内容のみならずそれを取り巻く状況を含めて、とても面白い本です。
フィクションとして読むなら、主人公(佐藤氏)はタフでクール、それでいて目的のためには危険な橋を渡ることも躊躇しない熱血家の部分もあり、ついでに義理堅く、意外に涙もろい魅力的なキャラクター。プロの情報屋だけど大学時代は神学を専攻し、モスクワ大学で宗教学の客員講師を勤めたこともあるという意外性のある設定も、キャラクター造形に重厚さがついてナイス。敵側の西村検事もステロタイプな嫌味エリートではなく、人間的魅力に溢れている。取調室でこのふたりが丁々発止のやりとりをしつつ、お互いに奇妙な信頼感を感じ始めるくだりはまさに名シーンだ……なんてふうに、エンターテインメント小説的読み替えもできるぞ(当事者の方々には失礼だが)。
ところで、実をいうともうひとつ別の感想というか、気になることがある。この本を読んだのは2、3週間ほど前なのだが、その「気になること」が、まあなんていうか不謹慎なので、このサイトで書こうかどうか迷っていたのだ。ネットでこの本について触れている文章を読んでも、みんな真面目な感想を書いてるので、尚更迷った。こんなこと考えてるのは俺だけなんだろうかと。
でも、さっき偶然、同じようなことを考えてた人を見つけたので、書いちゃうぞ。
・実物日記 - 今日の読書――やおい脳で「国家の罠」を読む
そう、これ! 読んでるときにすげえ気になったんだよ! えーとつまり、この本ってやおい的にどうなの?
佐藤氏と西村検事の取調室での攻防……お互いに「国家」を背負ったプロとしての矜持があるので激突→裏の裏を読むような駆け引き、心理戦→やがてお互いに、一人の人間としての信頼を感じ始める→だが情緒に流されてはいけない! 鈴木先生を裏切ることはできない!→西村「ムネオなんてひどい男だぜ……俺が忘れさせてやるよ……」→佐藤「断る! 私は鈴木宗男という男と共にあることを誓ったんだ!*1」→西村(なぜこいつはこんなに頑なに……俺も、鈴木宗男という男を知りたくなってきた……)……という流れ*2は、これっていわば佐藤・西村・宗男の三角関係じゃないですか!*3
いや、腐女子じゃないのでまったく見当はずれのことを言ってるかもしれないけど、これってやおい妄想を刺激するんじゃないのかな? どうなんだろう。俺はそこが知りたい。
……ああ、なんかほんとにひどいことを書いてる。
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/03/26
- メディア: 単行本
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