NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

「恋のバカンス」がちょっとだけ復活してた

 土曜日の深夜、なんとなくテレビを見ていたら、竹中直人の「恋のバカンス」が始まったので驚いた。
 「恋のバカンス」は94年から95年にかけてテレビ朝日系列で深夜に放映していた30分のコント番組。出演者は竹中直人の他ビシバシステム温水洋一片桐はいり、それに準レギュラーで高橋幸宏も出ていた。番組の構成は岩松了宮沢章夫などが手がけていた。
 なんでも昨年末に総集編DVDボックスが出ていたらしく、今回はそのプロモーションということだったのだろう。「2006」と称して新たに制作したコントと、オリジナル版当時のコントを半々くらいの割合で流していた。
 放映当時の94年頃といえば、竹中直人が映画や演劇、テレビCMなどでがーっと波に乗り始めた時期だ。だが当時の僕はコメディアンとしての竹中直人のことをほとんど知らなかったので、この番組にはかなり面食らった覚えがある。コントの内容自体も、あまりテレビ番組ではお目にかかれない雰囲気のものだったし。端的に言えば「不条理」モノで、どのコントでも竹中演じる人物が他の人物に(よくわからない理由で)怒り始める、というものだった。竹中の十八番である「笑いながら怒る人」演技が毎週見られるのも売りのひとつだ(たぶん)。
 深夜番組とはいえ視聴率はけっこうよかったようで、「ナンの男」コントなんかは高校のクラスでもごく普通に話題にのぼっていた記憶がある。確かあの頃はカレーの付け合わせとしてのナンってぜんぜん知名度がなくて(まあ少なくとも僕の住んでいた地方都市の高校生にはね)、あの変な布切れみたいなモノは何なんだ、食い物なのかと不思議だった。
 今回改めて見ても面白かったんだが、あれだね、今見るとこれはとても不穏な空気に包まれたコントばっかりだったんだね。さっき「どのコントでも竹中演じる人物が他の人物に(よくわからない理由で)怒り始める」と書いたけど、まあ言ってしまえば、どのコントでも竹中直人演じる人物が狂ってるわけだ。最初っから全開フルスロットルで狂ってて話が通じない人もいれば、「普通の人」が仕事上の演技で変なことをしているのだと思ってたら実は本当に狂ってたりとか、人間関係をうまく築けない人が煮詰まってだんだん狂っていく場合もある。どのコントもツボに入れば腹を抱えるほど面白いんだが、振り返ってみると怖いよ。
 今回の新作コントで、山登りで出会った登山者同士が挨拶をする習慣に納得できない男(竹中)が挨拶してきた男と口論になり崖下へ転落、二時間後、ボロボロになって崖から這い上がってきた男が「大丈夫ですか」と駆け寄ってきた人たちを次々に崖から落とす、っていうネタがあった。めちゃくちゃ面白かったし、別に陰惨な雰囲気は微塵も感じさせないんだが、これが直球でホラーだった。崖から這い上がってきた男は明らかに「すでに死んだ人」で、見た目も貞子みたくなってるんだこれが。

竹中直人の恋のバカンス DVD-BOX

竹中直人の恋のバカンス DVD-BOX