NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

『それは「ポン」から始まった』を薦める

ゲーム語りリングの掲示板に書き込んだものだが、こっちにも載せておこう。

 昨年の9月にアミューズメント通信社から発行された『それは「ポン」から始まった アーケードTVゲームの成り立ち』(赤木真澄 著)ですが、しばらく積ん読になっていたのを読み始めました。
 だいたい半分ほど読んだ時点での感想ですが、これはもう、本当に面白い本です。題名どおり、本書はアーケードゲームの歴史についての本です。しかし、その記述は今世紀初頭のピンボールエレメカなどの技術史的・産業史的発展から始まり、それがやがて「ビデオゲーム」という発明の受け皿になっていく過程を丁寧に描いていきます。
 また、この種の(ちゃんとした)「ゲームの歴史」本のほとんどは欧米の著者によって書かれていたため、同時代の日本の状況についてはあまり詳しく書かれていないものが多かったのですが、さすがに長年アーケード業界紙を発行してきた著者だけあって、その点はまさに独壇場です。今や一部上場の大企業となった古参のゲーム会社が、「ビデオゲーム産業」の誕生という大きな歴史のうねりの中でどう立ち回ったかが、それこそ各社の出していたコピー基板の名称に至るまで克明に記述されています。当時のカオティックな熱気が伝わってくるようで、実に面白い! アメリカのゲーム業界と日本のゲーム業界のさまざまなレベルでの交流(輸出入、コピー、技術指導、業務提携、人材交流などなど)が新たな「発明」を生み出し、それがビデオゲーム・ゲーム業界の目まぐるしい変化・進化・深化を押し進めていくという、黎明期ならではのダイナミズムを読みとれると思います。


 古いゲームに関してある程度の知識や興味がないと楽しめないかもしれませんが、アーケードゲームの歴史にちょっとでも興味があるのなら、ぜひとも読んでいただきたい本です。そういった大きな話題の他にも、思わず人に話したくなるような細かなトリビアといいますか、歴史の一コマがいっぱい出てくるので、そういう方面でもお進めです。ナナオアイレムの親会社になったきっかけとか、思わず「へええー」と唸ってしまいました。


 今までは版元(アミューズメント通信社)からの直接通販でしか購入できず、ちょっと敷居が高かった本書ですが、今年の1月から一般書店向けの流通にも乗ったとのことですので、大きめの書店なら置いてあるかもしれません(なくても取り寄せできるはずです)。また、残念ながらAmazonでは現時点で新品を取り扱っていませんが、その他の一部ネット書店(復刊ドットコム楽天ブックスなど)では取り扱いを開始しています。詳しくは版元の紹介ページ下部にあるFAQをご覧ください。また、ネット上での感想や書評のリンク集もあります。
http://www.ampress.co.jp/pr_flyer.htm


とりあえず、本書のより詳しい書評、読みどころに関しては、id:hally氏と鶴見六百氏のエントリをご覧いただくのがいいかと。
http://d.hatena.ne.jp/hally/20050919
http://www.0600design.com/archives/2005/10/post_131.html

 というわけで、このサイトを見に来てくれているような方ならきっと面白く読めると思います。Amazonでは現時点でマーケットプレイスにしかなく、しかも妙な高値がついてるけど、版元にはまだ在庫があるようなのでそっちでお買い求めになるのがよろしいかと。こういう本が少しでも多く売れて、同じ系統の本がもっといっぱい出るようになるといいなあ。

※2006.06.20追記:とうとうAmazonでは完全に品切れになった模様です。