NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

NDS『みてはいけない』公式サイトの「お詫びと訂正」について邪推

 昨年の夏は、ニンテンドーDSで例年になくホラーゲームがたくさんリリースされた。『ナナシ ノ ゲエム』『トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説』『DEMENTIUM 閉鎖病棟』『学校の怪談DS』『SIMPLE DSシリーズ Vol.42 THE 廃屋病棟 〜呪われた病院からの脱出〜』などなどが、6月後半から8月にかけて次々にリリースされ、ちょっとしたホラーゲームのプチブームだったわけだ(正直なところ、ヒットしたものはあまりなかったようだが)。
 2008年8月7日にディンプルから発売された『みてはいけない』もそんな一本。画面に表示される「心霊写真」を見て「霊」が写っている箇所を探し出し、タッチペンでそれを塗りつぶして「除霊」する、というゲーム内容だそうだ。一昔前の心霊特番でよくあった、記念写真とか日常のスナップ写真に霊能者がマーカーで丸を描いて「ここに女の人の霊が……」とか言うあれ(そこにズームするカメラ、なんとなく薄らぼんやりと人の顔……?っぽくみえる影、客席の一人か二人が悲鳴をあげたのを皮切りにどよめくスタジオ! 素晴らしい予定調和だ)、それをゲーム化したようなものかな、と推察する。

みてはいけない

みてはいけない

 メインとなるこの「心霊写真モード」のほかに、「ノロイの家モード」というアドベンチャーゲーム的なモードもあるそうだ。これは、メインモードのゲーム進行状況と連動する形で物語が進行し、平凡な一家の日常が徐々に怪異に蝕まれていくさまを描いているという。たぶん、除霊した心霊写真の枚数とか除霊の成否でフラグがたって、サブモードの「ノロイの家」で新たなイベントが起きる、というような仕様なんだろう。
 僕自身はプレイしたことがないんだが、今日の昼休み、ちょっと別件の調べ物をしていて、このゲームの公式サイトが検索結果にたまたまひっかかった。開いてみたところ、トップページの最新情報に「HPでのご案内に関するお詫びと訂正」という一文を見つけ、なんとはなしにクリック。公式サイトに掲載されていたゲーム内容の紹介文の一部が、実際のゲームの内容と違っていたのをお詫びして訂正するというリリースで、まあこういうのはよくある。でもその訂正の中身がなんとも味わい深かったので、塩焼きそば298円をもしゃもしゃ食いながら口の端に邪悪な笑みを浮かべつつ、はてなブックマークに登録したのだった……!

■誤りのあった箇所
みてはいけないHP ノロイの家モード紹介ページ


ノロイの家は、ゲームを進めるにつれ、以下のような要素が発生します。
 ・父親が無言で包丁を研いでいる
 ・真っ赤な何かの肉が部屋にまかれている
 ・マリア像のような置物が血の涙を流す
 ・台所の食べ物が腐敗したまま放置されている
 ・風呂の蛇口から女性の髪の毛が流れてくる
 等々


これらの演出につきましては、倫理上の問題で差し替えをしたため、実際には
下記のような演出になっております。


・父親が電動ノコギリを持って襲い掛かってくる.
・妹の部屋に死体がある.
・人形の生首を集めてる女に襲われる.
・ゴミをどかすと大量の虫が現れる.
・風呂に大量の髪の毛が浮いている. 等々


ご購入いただいたお客様を混乱させてしまい、申し訳ございませんでした。
http://www.dmpl.co.jp/miteha_ikenai/index5.html

 「倫理上の問題」とか言ってるのに差し替え後のほうがショッキングじゃん! 包丁研いでるだけの思わせぶり演出がチェンソー持って襲ってくるテキサスでマサカーな演出にパワーアップ! せっかく「真っ赤な何かの肉」っていう曖昧かつ想像力を厭な方向に掻き立てる表現だったのが「死体がある」ってストレートに言っちゃってるし! 蛇口から髪の毛が流れてくるのと最初から浮かんでるののどこに倫理上の相違があるのか!
 っていう突っ込みどころ満載の文章で、最初これをブックマークしたときの僕の気持ちとしては、倫理上の問題とか取り繕って書いてるけど、つまりアレでしょ、うふふ、ちょっと苦しいよなあ……うへへへへ……という、あー、まああれだ、たいへん下衆なものであった、ということは正直に告白しておきたい。
 で、たまたま僕が最初のブックマーカーだったわけだが、なんかその後予想外にブックマーク数が増えてたのでちょっと驚いた(→はてなブックマークのページ)。
 だがブクマのコメントを見ていると、どうも「倫理上の問題」という文言から「ゲームの表現規制」とか「CEROレーティングの不透明さ」とか、あるいは「バイラルマーケティングの一種か」というような問題系でこの「お詫びと訂正」を読んでいる方が多いようだ。うーん、俺は関係者じゃないから実際のところどうだったかというのはわかんないし、もしかしたら本当にそういうことだったのかもしれない。だけど……これはたぶん違うと思うんだよなあ……。
 まず、この「お詫びと訂正」の文章は、8月7日の発売日から一ヶ月以上たった9月12日に発表されている。このことから、「ゲームソフト」という、発売週の初動が重要視される(しかも続編ではないオリジナル新作タイトルの)マーケティングのフックとしては、些か時期を逸していると見るべきだろう。普通は商品の発売前にやっておくものだし、このゲームの「ホラー」というジャンルを考えれば、9月の中旬、秋口に入っている時期では店頭でのホラーゲームのプレゼンスは下がっている。ついでに言えば、夏休みも終わっている。
 純粋にレーティング上の問題であった可能性は否定できないが(公式サイトに掲載されていたのはあくまで文字情報で、ゲーム中の画面写真ではない。文章にするとそんなでもないが、実際のゲーム中のグラフィックではエグいことになってたかもしれない)、だがしかし、「父親が無言で包丁を研いでいる」よりも「父親が電動ノコギリを持って襲い掛かってくる」ほうが刺激的な内容ではあるだろう。“レーティング上問題があるから表現をソフトにした”の正反対の行為に見える。むしろ、なぜ包丁を研いでいるのか想像してじわじわくる怖さよりも、ドギャーンと襲ってきておっかないほうがキッズ層にもわかりやすいでしょ! という変更だと見たほうがしっくりくるのでは? 「差し替え」したという演出それぞれの変更具合を見るに、もともとは「想像すると怖くなる」「あえてぼかした表現で不気味な雰囲気を醸し出す」という方向性で考えられていた演出を、「直接的なショック演出で驚かす」という方向性へと路線変更したのではないだろうか。サスペンスではなく、サプライズのほうに振ったわけだ。それはCEROの審査結果を受けてからの変更としては、ちょいと大きすぎる路線変更に思える。
 ……と、つらつらと推測を述べたが、まあ実際のとこどうなんでしょうね。俺関係者でもなんでもないからよくわかりませんけどね。なんかわかったフリして書いてますけどね。俺にわかることなんてぜんぜんありませんしね。人生、宇宙、すべての答え、何もわかりませんわ。
 ということで(なにが?)、あくまで僕個人の邪推でしかないが、ブクマしたときの「つまりアレでしょ」っていうのをここにメモしておく。ええと、別にゲームに限らず一般的な事例として、ある商品のPRサイトを社外のWeb制作会社に発注するとき、予算とかスケジュールとか社内調整のゴタゴタとかあるいは単に宣伝担当者の力量とかで、サイトでアピールすることの明確なビジョンを指示できず資料とか素材とかの渡せるブツもほとんどなくて、しょうがないからとりあえず社内向けの企画書とかプレゼンシートをそのまま渡して「これ参考にお願いします」的に華麗に丸投げ→制作会社のほうもしょうがないんで企画書の文章のそれらしいとこをコピペしてアタリのテキストとしつつやっつける→絵素材とかができてきたのでそっちのほうは差し替えて見た目は修正したもののテキストはほとんどスルー→そのまんま納品、公開……てなことってよくあるんじゃないかと思います。ぱっと見た目は整ってるんだけど、恥ずかしい誤字とか英単語のスペルミスとか、よくありますよね。ね? そういうレベルなら公開後にダマでこっそり修正しちゃえばいいんだけど、なにせプロジェクトの初期段階で作成された社内向けの企画書なんかを元にテキストを持ってきてるもんだから、商品の最終的な仕様とは違うことが堂々とサイトに掲載されたまま、実際の発売日を迎えるまで社内の誰も指摘せず、お客様からの問い合わせがコールセンターに入って初めて気づく……なんていうおっかないことだってあるんじゃないでしょうか……情けない話ですが、そういうときはダマで直したりはせず、ちゃんと正式な「お詫びと訂正」の文章を載せるというのが企業としての最低限の責任ですし、一般的な対応だと思います。でも、「なんで間違った情報が載ってたのか」の元々の理由がどうにもこうにもナニな場合だったときは、そこはまあなんていうか、その、問題ない程度にアレしたりするというか、諸般の事情により、ですとか、よりクオリティをアップするために、ですとか、まあそういう感じで、そういう方向性で、進めさせていただく、っていうかたちに……ですよね。なるほどですね。*1
 ええとつまり、そういう類のことだったんじゃないかなー、と、邪推する次第であります。それは、かいてはいけない。

ナナシ ノ ゲエム 目

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トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説

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DEMENTIUM 閉鎖病棟

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保存版 放送禁止ザ・タブー (三才ムック vol.481)

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放送禁止検証動画FILE 完全版 10枚組BOX [DVD]

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*1:もちろん、ユーザーに著しく不利益を与えるようなクリティカルな間違いを事前情報として出してしまった場合は、その原因の説明に関しても厳密性が求められるでしょう。