NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

『Bugってハニー』と「あの頃」のハドソン製ファミコンゲーム

30周年記念ということでTOKYO MXで地上波再放送が始まった『Bugってハニー』の第一話を見た。放映当時このアニメを熱心に見てたわけではなく、ゲーム版のほうもとっちらかった内容だなと子供ながらに思ってちゃんとプレイしたことはないので、正直言って思い入れはほとんどない。細かいところもほとんど憶えていないし。

が、改めて見るとなんかすごいドラッギーな世界描写だったのが面白かった。『高橋名人の冒険島』のキャラクターを下敷きにした「高橋原人」が主人公で彼はゲームの中の世界に住んでいるわけだが、その世界の描写が不思議。南の島で、顔のある巨大キノコたちや巨木が話しかけてきたり、というのはおとぎ話的描写でまあわかるんだけど、ジャングルの木の幹に交通標識やバーコード、JISマークやSTマーク、麻雀の点棒などなど雑多なものが刺さっていたり貼られていたりしていてカオティック。

たぶんこれ、当時の(あまり若くない)アニメのスタッフたちが、当時のゲームのグラフィックにおける記号的な混沌をなんとか自分たちなりに解釈しようとしてこういうことになっているんじゃないだろうかと思う。劇中の要所要所では『ロードランナー』や『ボンバーマン』などハドソンファミコンソフトのゲーム中画面をそのまま模したシーンが挟まれるのだが、手描きのちょっとひょろひょろした線で表現されるドット絵が、「時代」って感じだね。

 


ちょい見せ 「Bugってハニー」

 

あと、小林亜星作曲のOP/EDテーマ曲で高橋名人がやけに美声かつ達者な歌を披露するのが印象的。特にOPテーマは映像も相まってなんだかおしゃれ歌謡曲というかソフトロックというか、なんだかそんな感じで良い。

近々で高橋名人の歌声を聴いたのはYMCKの「ロッケンロール・ランデブー featuring 高橋名人*1だけど、あれはゲストボーカルで歌うというよりはMCみたいな感じだったから特に歌声の印象はないんだよな。YouTubeで探してみると、2012年のライブでまさにこの曲の生歌を披露している映像があった。これを見る限り今も変わらずいい歌声だ。

 


高橋名人 Bugってハニー ~ ボンバーキング JADE-Ⅳより

 

ファミリーレーシング

ファミリーレーシング

 

 

と、持ち上げといてなんだけど、ファミコン版『Bugってハニー』前後くらいからのしばらくの時期、感覚的には『迷宮組曲』から『亀の恩返し』くらいまでの時期のハドソンファミコンソフトって、当時はどうにも好きになれなかった。

Bugってハニー』は横スクロールアクション+ブロック崩しというジャンルミックスものだけど、あの時期のハドソンのゲームってゲームジャンルに限らずいろんな要素を雑多に詰め込んでいて、それでいて詰め込んだ要素同士のシナジーがうまくいってない……みたいな印象があったんだよね。もちろんこの印象は今の俺の言葉で表現しているものだから子供のときはもっと漠然と、最初に書いたとおり「とっちらかった内容だなあ」くらいの感覚だったのだけど、妙な居心地の悪さみたいのを感じていたのだった。

ぶっちゃけ、子供の頃の俺はアクションやシューティングゲームでの「隠しキャラ」とか「謎」みたいなものがあまり好きではなかったのだと思う。なんでだろうなあ。どうも小学生なりに、「小学生に媚びてやがる!」と憤ってた節はあるような気がする。

逆に、同じくらいの時期にハドソンPCエンジンで出していたゲームにはそういう感覚はまったくなく、自分ではPCエンジンを持っていなかったこともあって憧れの対象だった。ハドソンPCエンジンの初期に出していたソフトは、移植作も含めてアーケードスタイルのシンプルなゲーム内容をリッチなビジュアルで表現したものとか、硬派なアドベンチャーゲームRPGとか、実験的なCD-ROMタイトルとか、とにかくファミコンとは一線を画する「中学生が遊ぶゲーム」って印象があったのだ。今となっては、その印象は少々買いかぶりすぎだったと知っているけど、当時の小学生の自分には、ファミコンのゲームの同一地平線上、あるいは延長線上にPCエンジンのゲームがあるとはあまり思えず、「ゲームセンターのゲーム」と同程度に、ファミコンのゲームとはかけ離れた存在に思えたのだった(「パソコンのゲーム」に関しては当時はほとんど知識がなかった)。

今は別に、あの頃のハドソンファミコンソフトにそういう苦手感覚はなくなって、あの時代の小学生が「ファミコン」に抱いていたリビドーを貪欲に取り込んだものとして捉えている。ああ、そのうちレトロフリークにその頃のハドソンファミコンソフトを取り込んで、連続して遊んでみるのもいいかもしれない。

*1:『ファミリーレーシング』収録