NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

リアルタイム・リプレイ

 現在開催されている世界水泳。夜中にTVで生中継をしているのをつけっぱなしにして、な〜んとなく見ているのだけれど(もともとスポーツ観戦にはあまり熱心ではない)、競泳の中継ですごく気になることがひとつ。
 残り50mになると、トップの選手に位置をあわせて赤い線が表示されるのです。線は各コースに対して垂直に表示され、ちょうど競馬の写真判定をリアルタイムで行うように、激しく競り合う選手同士で誰がトップなのかが一目でわかるようになっている。さらに、選手がゴールした瞬間、その選手が泳いでいたコースに選手の名前がパッと表示されるのです。
 文章で伝えようとするとなんてことはないスポーツ中継の合成CGにしか聞こえないかもしれないけれど、これらの表示が出るタイミングとか動きとかが見事で(特に赤い線はカメラの動きに対して完璧に同期している)、てっきりプールの底にそういう機械が設置されていて実際に動いているものだとばかり思っていた(線も名前の表示も透過処理がされていて、プールの水の揺らぎが透けて見える)。機械……というかプールの床が全面巨大液晶パネルか何かになっていて、そこにリアルタイムで表示されているような、そんな感じの映像だ。中継映像のキャプチャか動画がないかな、と探してみたがなかった。ちょっとあれはすごい映像なので見てほしい。
 もちろんこれは機械でも巨大液晶パネルでもなく、金をかけた同時合成なのだろう。確か去年か一昨年の世界水泳あたりからよく目にするようになった気がする。
 これに関して思い出したのがmnemonic spinn SRで2000年9月にアップされたコラム『意味するものと意味されるもの』スクウェアの『劇空間プロ野球』について、画面に表示されるチーム名・得点表示が気になった、ということが書かれている。

■なんかさ、この表示がテレビと完璧に同じ「本物」なんだよね。選手の顔とか動き(モーション)なんかが、スタッフの意図と気持ちと祈りを込め・技術を駆使して画面上に作られた「再現」なのに対して、画面右下の得点は放送局と同じ技術とクオリティで作られた単なる素の「表示」に見える。同じだから同じなんだもん、そんなドライさ加減まで感じられたりして。結構これって、ゲームじゃ初めての事態なんじゃない?

 当時これを読んだ私は、『劇空間プロ野球』の画面写真を初めて見たときに抱いた不思議な感覚……ゲームとしてのフォトリアリスティックな映像表現とはまた別の、「本物」感……の理由をずばり言い当てられた気がして大いに腑に落ちたのだ。
 今回の世界水泳の映像がどうして気になったのか? それはたぶん、あの映像がどう見ても「ビデオゲーム」の映像にしか見えない、ということだと思う。ビデオゲーム、それもレースゲームのリプレイ映像のような、そんな既視感……『劇空間プロ野球』を見たときとは正反対の、スポーツ中継の合成CG表現とはまた別の、「演出」感。
 あれを作っている人はきっとゲーム世代だと思うね(それが具体的にどんな世代かはともかく)。

劇空間プロ野球 1999

劇空間プロ野球 1999