NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

スポーツ中継がどんどんゲームの映像みたいになってる件について

 2003年の7月に書いた「リアルタイム・リプレイ」という記事で、世界水泳のテレビ中継について触れた。中継の映像に合成されるCGのゲームっぽさについてメモしたものだ。

 残り50mになると、トップの選手に位置をあわせて赤い線が表示されるのです。線は各コースに対して垂直に表示され、ちょうど競馬の写真判定をリアルタイムで行うように、激しく競り合う選手同士で誰がトップなのかが一目でわかるようになっている。さらに、選手がゴールした瞬間、その選手が泳いでいたコースに選手の名前がパッと表示されるのです。
 文章で伝えようとするとなんてことはないスポーツ中継の合成CGにしか聞こえないかもしれないけれど、これらの表示が出るタイミングとか動きとかが見事で(特に赤い線はカメラの動きに対して完璧に同期している)、てっきりプールの底にそういう機械が設置されていて実際に動いているものだとばかり思っていた(線も名前の表示も透過処理がされていて、プールの水の揺らぎが透けて見える)。機械……というかプールの床が全面巨大液晶パネルか何かになっていて、そこにリアルタイムで表示されているような、そんな感じの映像だ。

 これ、当時は「トップの選手に位置をあわせて」赤い線が表示されているものだと思っていたのだけど、そうじゃなくて実はあれは世界レコードが表示されているのだと、あとで気づいてメモし忘れていた。つまりあの赤い線は、世界レコードを叩き出した選手が現在のタイムではどの位置を泳いでいたか、を表している線なのだ。今回のレースで泳いでいる選手が赤い線よりも速くゴールすれば世界レコードの更新、というわけ。
 そう、あの赤い線は、ゴーストカーだったんだ! リプレイどころかタイムアタック、まさにゲームそのものだ。


 なんでこの話を今更追記しようと思ったかというと、笑bizの以下の記事を見たから。
・笑biz: バッターボックス後ろの広告を変える技術
 大リーグやアメフトのテレビ中継にリアルタイムでCG合成し、「スポーツ中継の分かりにくい動きを可視化する」技術をビジネスにしているSportvisionという会社についての記事だ。Sportvision社が具体的にどんなことをやっているのかは笑bizの記事を読んでもらいたい。世界水泳のあの映像もこの会社が関わっているのかな。
 Sportvisionのサイトでは、実際のテレビ中継の映像サンプルも見ることができるNASCARの中継にリアルタイムでCG合成して、コースを走っている車からドライバーの情報や顔写真が吹き出しのように出ている(しかもその吹き出しが車の動きにあわせて移動する)映像を見ていると、もうこれは「最新レースゲームの映像」にしか見えない。ゲーム機の処理能力がアップして、ゲームの映像がより現実に近こうとフォトリアリスティックになっていく一方で、現実の側の映像表現はどんどんゲーム的な修飾に彩られているわけだ。面白いなあ。


 かつて北米でEAの『Madden NFL』シリーズを追撃しようとしていたセガの『NFL 2K』シリーズが、ライバルとの差別化を図ってスポーツ専門放送局・ESPNと提携し、ゲーム中にESPNのテレビ中継と同じ演出を組み込んだことがあった(ご存知のとおり2K - ESPNシリーズは低価格戦略などでなかなか健闘したが、最終的にはEAのNFL独占ライセンス提携の前に敗れ去った)。そのうち他のスポーツゲームの分野で、Sportvision社と提携するゲーム会社が出てきてもおかしくないんじゃないかな。