「M&A」という言葉を耳にするたびに、脳裏にある映像が流れる。小学生の頃に見たテレビCMだ。
たぶん海外のテレビシリーズか低予算映画のビデオリリース告知だったと思うが、『M&A 愛と陰謀のほにゃらら』みたいなタイトルの作品のCMが集中的に流れていたことがある。80年代末頃だろうか。覚えている人いないかな?
「M&A」という(当時としては)耳慣れない言葉を説明するように、「M&A、それは企業買収」というようなことを重々しいナレーションが告げる。テンポの早い音楽。どうやらサスペンスのようだ。スーツ姿のビジネスマンたちが握手したり怒鳴ったり走ったりするカットが矢継ぎ早に展開する。あとなんか主人公らしき男がドレス姿のブルネット女と抱き合ったり。「巨大な陰謀の渦に巻き込まれた男が、今、復讐のために立ち上がる!」みたいなナレーションに『M&A 愛と陰謀のほにゃらら』というタイトルがどーんとかぶさり……
高級ホテルが大爆発! そこから間一髪で逃げ出しプールへダイブする主人公!! 「●月×日レンタル開始!」というスーパー!!!
その後大学に入るくらいまで「M&A」という言葉にはあまり触れなかったこともあり、小学生のときに見たそのCMのイメージが識域下に刷り込まれたのだろう。未だに、M&Aという言葉を聞くと、泊まっているホテルごと爆破されるくらい危険と隣り合わせのことだ、という印象がある。
追記
って話をしたら、情報分析課の後輩が『M&A』の画像を見つけてきた。さすがは情報のプロ。
そうそうタイパン。ジェームズ・クラベル原作だったのか……。1988年のTVムービーだった。
このビデオがリリースされた頃、堀江社長はだいたい15歳前後。思春期ど真ん中。地方の童貞ボンクラ厨房だった(決めつけ)堀江社長も、きっと影響されたに違いない。ジャケットからしてオトコの野望感満載だ。成長して社長になったとき、いわゆるITとはあまり関係のない企業だろうとなんだろうと、とにかくM&Aを繰りかえして事業規模を拡大する戦略を採ったのも、すべてはこのビデオの刷り込みだったのだ。そのクライマックスが、ホテル大爆発ではなく今回の逮捕だったというのは些か派手さに欠けるが、しかし「尊厳と威信を賭けた男たちのファイナル・バトル」は今まさに始まったのだ!