NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

まんぼうシール問題、自分なりに妥協点とかtipsとか

 福岡県書店商業組合が7月1日から導入した「まんぼうシール」が話題になっている。
http://tenjinsite.jp/shoplifting/まんぼうシールの趣旨)
http://www.fjnano.com/silyoumei.htm(福岡県書店商業組合による説明)
 書店での万引き防止のため、正規に購入した書籍(コミック、コミック文庫、新書、写真集)にはレジで「まんぼうシール(“万”引き“防”止でまんぼう)」を裏表紙に貼付、古書店にこのシールが貼られていない書籍の買い取り拒否を徹底してもらう、という狙いだそうだ。
 書店での万引き被害が深刻な問題なのは理解できるが、この「まんぼうシール」運動には1ミリたりとも同意できない。新品の本の表紙に、本の内容やブックデザインとはまったく無関係なシールを書店の都合で勝手に貼るというのがどんなに不躾なことなのか、なぜ気づかないのか。しかも県教委とか警察が押しつけた条例ではなく、書店の組合が自分たちで発案した運動だ。本を扱う最前線の立場の人たちが、どうしてこんな無神経な案を通してしまったのか、本当に理解に苦しむ。対象となっている書籍カテゴリのうち、特に写真集は(書籍としては)高価な部類に入る商品が多いカテゴリだ。凝った装丁のものも多い。そんな商品に勝手に無粋なシールを貼られたら、例え「愛書家」ではなくても、ほとんどの人は不快になるだろう。多種多様な客と日々接している最前線の書店員の方々がそのことに思い至らないはずはない。にもかかわらず、この案が通ってしまったということは、客に不快に思われてもいいと敢えて判断したということだろうか。暗澹たる気分になる。
 県民への導入前のPRや組合加盟書店への通達も不十分だったらしく、現場ではシール貼付の対応に混乱が出てきているようだ。書店組合サイトのBBSの書き込みを見るかぎり、今のところシール貼付の際にはそのつど貼ってもいいか訊いているようだが、今後どうなるのかはわからない。福岡在住の方にはお気の毒だが、このクソくだらない運動が全国に波及しないことを願う。


 腹を立ててばかりでは非生産的なので、私なりに解決法というか、妥協点を探ってみる。
 レンタルビデオ店やCDショップにあるような万引き防止システムは、導入コストがかかるから無理だというのはわかる。RFIDも同様だろう。「万引き」という犯罪行為そのものを阻止するシステムの導入にはコストがかかるから、仮に万引きされたとしても換金しにくい体制を作って抑止効果を狙うということなんだろう。
 だが、ぶっちゃけ、シールを貼ってようが貼ってまいが、ブックオフみたいな新古書店はほぼスルーして買い取るだろう(よっぽど怪しい持ち込みじゃない限り)。本を売っているのは別に組合加盟の書店だけではない(コミックの最新刊をコンビニで買う人は多いだろう)。シール導入の趣旨のうち、「換金が難しい制度づくり」というのを実現するのは、少なくともこのやり方ではかなり無理があると思う。
 でも書店組合として何らかの対応策はとらねばならないと敢えて主張するのであれば、まずシールを弱粘性のものにすべきだ。実際にシールを貼られた人のレポートを読んでみると、このシールはたいへん剥がれにくいもののようだ(痕跡症候群 - 福岡県で始まった「販売証明シール」についてのレポ)。剥がしたい人は簡単に、綺麗に剥がせるシールであれば、そして弱粘性シールであることをちゃんとPRすれば、もう少しは理解も得られやすいだろう。とは言えシールを貼られることそのものに拒否感を示す人もいるだろうから、あまりうまい手ではないかもしれない。できればシール貼付以外の道を探りたい。
 なるべく低コストでということであれば、栞やブックカバーというのはどうだろう。シールよりはコストがかかるだろうが、すでに各書店独自に本の購入者へサービスしているところも多いだろうから、新たなコストは発生しない。栞やブックカバー自体は既存のものでかまわないので、それをレジで客に渡すときに、書店組合共通のスタンプを押すのだ。えーと、まあ、「まんぼうスタンプ」みたいなやつをさ。これなら導入コストはスタンプ代だけだ。で、ブックオフとかにはこのスタンプがある栞/ブックカバーとセットじゃないと買い取り拒否してくれという渡りをつける(それに実効性があるかどうかは別問題だ、というかそれは客が心配することではない)。まあ栞やカバー無くしたらどうするんだという問題はあるが、少なくともシールを直接本に貼られるよりかは、客の理解を得やすいのじゃないだろうか。如何だろうか。


 以上は書店組合向けの妥協点だが、最後に客側の我々向け妥協点というかtips。この手のシールを剥がすときは、ドライヤーの温風を少し離した位置からしばらく吹き付けてやると、接着面の糊が溶けて剥がれやすくなる。貼られているものの材質にもよるから保証はできないが、そのまま剥がそうとするよりも綺麗に剥がれるはずだ。一気に剥がすのではなく、端から少しずつゆっくりとめくるような形で、半分めくったらまた温風を吹き付けてやるといい。まんぼうシールに通用するかどうかはわからないけど、試してみてください。


※06.08.09追記:写真集やマンガだけではなく、小説のハードカバーにも貼られる場合があるようだ。→Yahoo!ブログ - 大台突破: まんぼうシール、やられた(>_<)