NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

『赤い糸の女』

先週で終わった昼ドラ『赤い糸の女』だが、少々遅ればせながら最終回までを見た。いやー、すごかったね。最初から最後までがっつり見たというわけではなく飛び飛びの鑑賞ではあったけど、やっぱり中島丈博脚本・東海テレビ制作の昼ドラはすごい。ドロドロの愛憎劇って意味で言えば他のドラマでもかなりエグいものはあるが、やはり中島先生のドラマはそのスピード感、いや「ドライヴ感」が他とは一線を画す。ドライヴと、そして異様な圧縮っぷり。
今回のドラマの序盤で、例の「新婚夫婦砂浜落とし穴死亡事件」をモチーフ(というかそのまんま……ちょうど今、民事の裁判してるとこなのに大丈夫なのか……)としている下りがあってそこがちょっと話題になってたりもしたが、あのエピソードなんて超高速で処理されるからね。週の中頃の後半15分で事件が起きて、その週のうちに畳んじゃうからね。次の週ではもう数年後とかになってるからね。
もう一時が万事そんな感じで、ものすごく大変なことが起こってるのに超高速で処理されて次の大変なことがすぐポップするので、ドロドロの愛憎劇ではあるんだけど、別に見ていて心理的ダメージを受けることはない。カラッとして……はいないんだけど、いい意味で「浅い」ので、小気味いいテンポに感じられる。テンポといえば、やっぱあの独特のセリフ、本気なんだか悪ふざけなんだかよくわからないすごい言葉のつるべ打ちも素晴らしい(たぶん先生半笑いで書いてる)。役者さんもみんなノリノリで楽しそうに演じてるのが手に取るように分かる(今回は特に小沢真珠)。
あとですね、僕が中島先生の昼ドラでいちばん好きなところは、この超高速・圧縮作劇によって登場人物の「内面」に(一般的なドラマで言うところの)一貫性が無くなるところです。無くなるというか、先週は憎み合ってたのに、今週はなんとなく許しちゃって普通にやってたりする、という「曖昧な感じ」になる。それは、作中の時間の流れが速いので(その間にいろいろ葛藤とかあって少しは許せるようになったとかそういう人物の内面の変化を描かないので)結果的にそう見える、ということでもあるのですが、僕なんかはそういうシーンを見ていると、ああ、あんなに憎み合ったり軽蔑しあったりしていた人たちでも、まあなんとなく仲良くできて……「わかり合う」とこまでいくのは無理かもしれないけど、それでもこうやって、仮に表面上だけの付き合いだとしても、同じ空間にいてそこそこ平穏な時をともに過ごすことができるようになるものなのだなあ人間というのは……確かに、そういうのあるよね……人生……としみじみとした気分になるのです。
今回のドラマの最終回もまさにそんな感じで、それまでの愛憎がなんとなく、なあなあで(そして高速に)ぱたぱたと折り畳まれるように処理されていき、なんとなく穏やかに終わりました。テキトーだなあご都合主義だなあと批判する向きもあるでしょうが、僕はこういう、「そろそろお話も終わりなんで、じゃそういう感じで、ぼんやり丸く収めますんで」っていうアティチュード、「一代記もの」のようなある一定量の長さを必要とされる物語においては、すごく大切だと思います。人生の区切りをつけるのであれば、やはりそういうふうに、ぼんやりとではあっても丸く収めたいじゃないですか。いろいろあったけど、まあいい人生だよね、だったよね、的なね。そういう穏やかさ、豊かさ、余裕、必要だと思うんですよね。だから中島先生の昼ドラを見ていると、最後にはなんだか妙な多幸感に包まれるのです。

赤い糸の女 オリジナルサウンドトラック

赤い糸の女 オリジナルサウンドトラック