NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

PS1版『ドラゴンクエストVII』の思い出

おあー、もう3DS版のドラクエ7が出るのだな。今は他のゲームが忙しいからやらないだろうが、そのうちやろうかなー。しかしまた100時間費やしてクリアできるかというと、どうなんだろうちょっと不安だ。まあリメイクにあたってもう少し短くなるように調整はされてると思うんだけど、でも40時間とかではないでしょきっと? PS1版はごく普通にプレイしてクリアまで100時間だったからね。俺なんてゲーム下手だから120時間くらいはかかってたはずだ確か。

しかし、PS1末期の2000年夏というのは、『ファイナルファンタジーIX』が出た1ヶ月半後にドラクエ7が出たのだよな。あの頃はまだスクウェアエニックスが別の会社だったわけだしな。FF9はかなり入れ込んでプレイしていて、まあでも俺はゲーム下手くんなのでクリアするのに1ヶ月くらいかかり、余韻に浸ってるくらいのタイミングでドラクエ7が出たのだった。

各種広告に使われたドラクエ7のメインキャッチコピーは「ひとは、誰かになれる。」で、このコピーはパッケージのタスキ*1にも入っていたはずだが、今手元のパッケージを見たらタスキが入っていなかった。店頭でこのパッケージを見てとても印象に残った記憶があるので、タスキも捨てずにちゃんと保管していると思ってたのだが。

なぜ印象に残ったのか? いや印象に残った程度ではなく、店頭でこのキャッチコピーを見たときにちょっと感動して鼻の奥がツンとしたくらいだったのだが、それはちょうどその頃、就職活動をしていたからだ。就職氷河期真っ只中なうえに、俺は大学五年生だったものだから状況は推して知るべし。というか、今から振り返ればそもそも就職活動自体をあまり本気でやっていたとも思えず、そのくせ将来に対する漠然とした不安だけはどんどん大きくなるという、まあ駄目な人間だった。甘美なるモラトリアムの牢獄で囚人仲間と足枷の鎖を自慢しあう的なノリだった。どうしようもなくベタな表現だが、自分が何を成せるかがまったくわからなかった。

まあそんなときに、「ひとは、誰かになれる。」だ。

別に勇気づけられたとか安心したとかではない。俺も「誰かになれる」んだ、などと思ったわけではない。なんだろう、説明するのは難しいが、「ドラクエ」の最新作、PS1でリリースされるという第一報で「次世代機戦争」を事実上終結させ、にもかかわらず延期に延期を重ねてハード終焉期になってからやっと出たというこれ以上ないほどの超大作であり、ゲームファン以外の世間一般的にも普通に話題になるほどのビッグイベント、そんな、生まれる前からすでに「王」である作品が発するメッセージがこれである、ということに、大げさな表現かもしれないが畏怖ないし畏敬に近いものを感じたのだ。王たる者しか口にできない言葉。人々の期待を一身に受け、なおかつその期待に潰されることなく堂々と世に出た作品が放つ最初のメッセージ。一商品のセールストークではなく、〈人の世〉に対しての完全なる肯定の宣言。
こんなキャッチコピーは、ドラクエの、わけてもドラクエ7くらいのビッグタイトルではないと使えない。あまりにも巨大なメッセージだ。巨大で、圧倒的な正しさを持った言葉だ。その正しさを全身で引き受ける覚悟を持った言葉だ。私には眩しかった。思わず一人称を「俺」から「私」に変えてしまう程度には背筋を正さねばならないと感じた。私自身の駄目さ、人生に対するだらしない態度とはまったく関係なく、この世にはこんな〈正しさ〉を、全肯定のメッセージを、たじろぐことなく表明できる者が、物が、存在しているのだ、ということに、私は震えたのだった。*2


まあそんな感じで、俺は(あ、一人称戻った)プレイする前からほとんど「よし! ドラクエ7! 全肯定! ターンA!」くらいの気分ではあったのだが、まあでも一般的な評価としてはやっぱり「長すぎる」というのが不評であったし、それはわかる。でも、俺はあの長さは必要だと思ったな。あの長さ、「100時間」を実際にプレイヤーに強いないと表現できない種類の物語だと。ひとつの島しかない世界に次々と大陸が生まれ、新しい世界を時空を超えて旅をして、小さなエピソードが積み重なる長い長い物語の末、終盤で「唯一神*3に反逆せよ!」って展開になったときはテンション爆上がりだった。いやね、神に反逆する話だったら時間かけないといけませんよ。

あとドラクエ7といえば永田泰大風のように永田)のプレイ日記。まだファミ通.comに全部残ってるから、3DS版をプレイするときがきたら読み返しながら遊んでみようかな。

DAILY! ただいまプレイ中:永田のドラクエ7


ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち

ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち

*1:CDメディアのパッケージで、ケースの背の部分に巻く短いカバー状の印刷部材のこと。オビとかサイドキャップとか違う呼び名もあるかな。タイトルやキャッチコピー、簡単な解説や仕様が記載されることが多い。

*2:今検索したら、AmazonのPS1版ドラクエ7の商品画像では、タスキのコピーが「新しい時代の 新しいドラゴンクエスト」となっていた。あれ、俺の記憶違いか? と焦ったが、他の個人サイトなどにアップされている画像では「ひとは、誰かになれる。」のキャッチが入ったタスキがついている。Amazonのは発売前の仮画像を使ってるのかな? ただ、「新しい時代の〜」というキャッチもなんとなく憶えてるので(これはこれで堂々とした、そして「2000年」という時代を背にしたキャッチだ)、どこかのタイミングでランニングチェンジしたのかもしれない。

*3:を名乗る/騙る者