マックス・ブルックス*1の小説『WORLD WAR Z』は、いかにも「俺たちボンクラオタクがかっちょいいと思うゾンビパンデミックシミュレーション小説!」って感じで、正直なとこちょっと個人的には鼻について乗り切れない部分もあったものの、まあなかなか面白い作品ではあった。
全世界的なゾンビ禍で人類の文明がガタガタになってしまうほどの大混乱の後、なんとか復興の途について10年後。「あの災厄」を後世に伝えるため、ということで世界各地の市井の人々や政府・軍の要人などに当時のことを語ってもらったインタビュー集……という設定。短めの短篇小説程度の長さのインタビューを積み重ね、個人個人の体験というミクロの集積としてゾンビ禍というマクロな事態を語る、オーラル・ヒストリー的手法のモキュメンタリー小説だ。ジャンル・ホラー小説的なエンタメ要素はそこまで強く押し出さず、ゾンビ禍によって世界はどう変化したのかを描く内容なので、スケールはでかいが地味といえば地味なお話。
で、これが映画化されるって話は邦訳が出た当時からあったけど、でも読んだ人のほとんどは「こりゃ映画には向かないだろう」と思っただろう。2時間くらいにまとめるのが無理な構造なんだから当たり前だ。せめてテレビドラマのミニシリーズくらいのボリュームがないと、これを原作として映像化する意味がないとも言える。で、案の定かなり原作から改変されて、ヒーロー的な主人公がゾンビ禍の真っ最中に世界各地を回って奮闘する話になったらしい。別にこれが原作じゃなくてもいいんじゃないか……。
まあそれはともかく。聞いた話だと、宣伝で「ゾンビ」というワードは使わないという方針らしい。『ドーン・オブ・ザ・デッド』とか『28日後……』でもそうだったし、まあ別にその方針自体はいいんだけどさ*2、この予告編だと、原作を知らない人にはそもそも何が起こってるのかよくわからないと思うんだが……なんの戦争? っていう。最後あたりでばばーっと出てくる暴徒みたいの何? みたいな。日本だけなのかなと思ったらアメリカ版のトレイラーもほとんど同じ感じなんだよね。まああっちでは原作の知名度が日本よりももっとずっと高いだろうからこれでもいいのかもしれないけど。
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あ、Kindle版も出てるのか。大部だからKindleのほうが読みやすいかも。
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