NGM+その他の欲望

Nightcap Gamer's Memopad, そしてその他諸々についてのサムシング。

UCGO、または幻想の宇宙世紀



 『Universal Century.net GUNDAM ONLINEUCGO)は、まさに前代未聞のプロジェクトだった。21世紀を迎えてすぐ、2001年初頭にディンプスというあまり聞きなれない(当時はまだ知名度が低かった)ディベロッパーからこのPC向けMMORPGの企画概要が発表されたとき、誰もが耳を疑った。

  1. 「地球から月までの半径40万kmの空間を、すべて実寸で再現」
  2. 「しかもゾーン切り替えなどがなく、地球から月までシームレスに移動可能」
  3. 「1サーバに、最大16万人が同時接続可能」
  4. 「ヘッドマウントディスプレイを使用することで、全方位型コックピットを体感できる」

参考:web archiveに残っている発表当初の公式サイト

 まったく途方もないスケールだ。当初はガンダムの版権作品であることを隠して(あるいは交渉が進行中だったのか)、ただ『Universal Century.net』という仮題のみで発表されたため、「汎用型格闘戦用機動兵器」や「宇宙コロニー」の存在が明かされるにつれ、「“宇宙世紀”だなんて、これじゃまるでガンダムみたいじゃないか」とゲーム関係のネット界隈は騒然となり、公式BBSや2chでは憶測や期待、懐疑論やときには罵倒の書き込みが溢れ返った。
 情報は小出しにされ、しかもどんどんスケールが大きくなっていった。例えば公式サイトのFAQにはこんな話が。

Q011:PKなどの対人システムはありますか?

他人が住んでいるコロニーに強制的に核パルスエンジンを装着し地球に落としてしまうなんてこともやってしまおうかなぁと考えています。

 ……! まさに夢のようなゲーム……しかし、「やってしまおうかなぁと考えています」というなんとも頼りなさげな言い方や、当時の一般的なPCのスペックと比べて異様に敷居が高い要求スペック、そしてディンプスの社外相談役に島田紳介が就いていたことからも(笑)、これは壮大な釣りか冗談ではないか、話題づくりのために最初から完成させるつもりのないプロジェクトを発表しているのではないか、という空気がネットに漂い、いつしかあまり話題にのぼらなくなっていった。
 だが2001年末、正式にガンダムの版権作品として、改めて『Universal Century.net GUNDAM ONLINE』というタイトルが発表され、開発中のスクリーンショットモビルスーツが登場し始めると、また話題は沸騰した。当時唯一のオンラインゲーム専門誌だった「Online Player」(「Play Online」の後継誌)に独占記事が載り、その美麗なスクリーンショットに驚きつつも、2002年中のβテスト開始を匂わせる記事には、眉唾もんだなあと思っていた。それでもまだその頃は、いつになるかはわからないけれど、このゲームが正式稼動したらぜひプレイしたいと、半分くらいは真剣に思っていた。


 それから時は流れた。流れに流れた。ときたま更新されるスクリーンショットもさすがにもうあまり話題にならず、クローズドで行われたαテストやβテストの評判はどうなのかと2chのスレッドを覗いてもまだまだ完成にはほど遠い状態だという話題ばかり。何もない宇宙空間しかないとか、オーストラリア大陸しかないとか。
 冷静になって考えてみれば(いや冷静にならずともわかることなんだが)、仮に最初の発表どおりの仕様が実装されたとして、実寸大の月と地球という巨大な空間では、16万人が同時接続したとしても、あまりにもスカスカだ。他のプレイヤーと出会うのにリアルタイムで半日くらい移動しなければならないんじゃないだろうか。2001年当時では敷居が高かった要求スペックも今やそれほどの問題にはならなくなったが、この国のPCゲーム市場で16万人が同時接続するような大ヒットは、たとえガンダムという超強力な版権の力をもってしても、どだい無理な話なんじゃないだろうか。だったらなおのこと、スカスカの世界が待っていることになる。空虚すぎる宇宙世紀。そんなものが果たして楽しいのだろうか。
 そうそう、PCだけじゃユーザーが確保できないから、Xboxにも移植されるんじゃないかという憶測もあった。日本でXbox Liveの開始がアメリカより遅れているのは、UCGOXbox Liveのロンチタイトルにするための調整をしているからなんじゃないかという、希望とも妄想ともつかない噂をネットで見たこともあったなあ。あれは2002年のことか。


 先日、突如としてUCGOの正式サービス開始が発表された。2/14、バレンタインデーの日に、パッケージ販売のみでサービスインという発表だった。直後から2chUCGOスレは荒れる。今の状態でパッケージ売りをするのか、こんなのでサービスインするのか、というクローズドβテスターからの批判的な書き込みが大勢を占めた。

44 :名無しさん@お腹いっぱい。 :05/01/14 23:16:20 id:V271ejuL
 結論

 広告に乗ってる80%位のことは発売されても出来ない
 (広告にある鉱山、白兵戦、艦砲戦、衣類の生産、地球圏100万km、などは今現在なし)
 その中でも白兵戦(格闘戦)はかなりの問題があるらしく実現は不可能っぽい
 発売後年3回のパッチで逐次実装とあるがこれもほとんど期待できない

 ガンダムと名がつくならならどうしてもやりたいって人は居るので
 そういう人止める事は出来ないが既存のMMOを少しでもやったことある人なら
 ものすごく後悔する事間違いなし、今まで発売されたすべてのMMOを下回る出来
 そもそもMMOの様相を成していない、ユーザーインターフェースは劣悪
 ショートカットキーなしマクロなしキー配列変えることも出来ない
 (やれることが無さ過ぎて入れる必要も無いのだが)
 PVPが主体のMMOであるのにチャット関係も全体チャットとグループチャットの二つしかない
 グループチャットは16人しか入れないので数百人規模の戦いでは使えない
 そもそも100人ほどが一箇所に集まると極度に鯖が不安定になるので
 数百人規模の戦闘など出来ようも無い
 スキル制をとってはいるがスキルブレンドなど出来ない
 スキルMAXになってしまったら強さはMSのみで決まる
 格闘戦特化のスキル構成にしグフに乗って射撃特化スキルのガンダム
 何とか接近戦で倒すなんてことは出来ない

 又ガンダムのゲームとして見た場合も売りの1つであるビームサーベルでの格闘戦
 敵に合わせて武器の持ち替え、盾で防御するなどは無し
 武器はMS毎に1つで固定、武器性能は単に射程と威力が違うだけ

 SDガンダムガチャポン戦士の100分の1の出来というか比べるのも失礼。

 このゲームが少しでも売れてしまったら今後の日本ゲーム業界の為にならない
 バンダイは舐め過ぎているガンダムと名前つければ俺たちが何でも買うと
 思っているのだ、この酷い出来が解っていて確信犯的に販売するのだから
 ユザーサポートや苦情、返金などに応じるとも思えない

 ガンダムと名のつく物は糞でも食って来たガヲタの俺が言う
 このゲームは買わないほうがいい。




 PS、俺は買うがなorz

(2ch:UC-GUNDAM ONLINE part 76)

 もちろん、サービスインするにあたってβテストよりかはましになっているかもしれない。しかし、今までの遅々として進まない開発進捗を見る限り、それもたかが知れている。本当にこれで出すつもりなのか、とりあえずパッケージの売り上げと課金で少しでも開発費を回収しようというずさんな計画なのではないか……書き込む人間の意見はほとんどそのようなものだった。サービス開始のニュースを見て、あれ、いつのまにか完成してたんだーと驚き半分疑い半分で久々にUCGOスレを覗いた私は、βテスターがリークする悲惨な情報に、軽く失望しつつもさもありなんと思っていた。悲しいことだ。


 そして本日(1/26)、そんな非難の声に押されるかたちでサービスインの延期が発表された。夏頃まで延期というほかは、具体的なスケジュールはほとんど発表されていない。


 2001年の発表から本当に長い時間がたってしまったと感じるのは、UCGOのサービスイン発表および延期のニュースが、ネットではそれほど話題になっていない、ということだ。発表当初の侃々諤々の騒動は、2005の現在ではもう起こらない。ガンダムのゲームで、しかもこんなに(あらゆる意味で)巨大なプロジェクトのはずなのに、ゲーム系の個人ニュースサイトやblogで、この話題の盛り上がりはあまりにも小さかった。心から楽しみにしていた人も、どうせ完成しないだろうと単に面白がってウォッチしていた人も、みんなどこかに行ってしまったようだ。
 思うに、UCGOが発表された2001年というのは、まだ「オンラインゲーム」に対してユーザーが夢を、それも巨大な、根拠のない夢を抱くことが可能だった最後の年なんじゃないだろうか。2002年以降、FF11が始まり、Xbox Liveが始まり、韓国産MMORPGの本格的な日本進出が進み、廃人やリアルマネートレードやマナー厨などの問題が話題になり、Xboxが日本市場で惨敗し、PS2のネット戦略が迷走し続け、みんな、「オンラインゲーム」のことがわかってきた。「オンラインゲーム」はしっかり浸透した。実際にプレイしたことがない人でも、2001年当時のように「なんだかよくわからないけれどとにかくすごい」というような過大な期待を持つこともなく、冷静に「オンラインゲーム」を見つめるようになった。
 だから、UCGOは早すぎて遅すぎた。発表当時はインフラやハード面で時代が追いつかず、開発しているうちに時代が通り過ぎてしまった。だけどまだ終わったわけではない(はずだ)。正式なサービスインのときに、仮に当初の企画よりもずっとスケールダウンした仕様に(つまり現実的な規模のものに)なっていたとしても、私はプレイしようと思う。正直言ってガンダムがさほど好きなわけではない。だけど、巨大で無謀で、それゆえに愉快な試みの行く末を見届けたい気持ちは、とても強いからだ。