NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

マルイと丸井今井

https://www.0101.co.jp/ より

 

マルイのロゴ「○I○I」を「オイオイ」と読んでいた、というあるあるネタのようなものを最近どこかで見かけた。どこだったのか思い出せないのがなんというか年を取ってしまったなという感じだが、それと別に思い出したことがあるのでメモしておく。

 

北海道ローカルの老舗百貨店に「丸井今井(まるい・いまい)」という店がある。本州のファッションビル「マルイ」とはまったく関連のない企業だ。90年代末頃までは北海道全域のいくつもの都市に店を構え、クレジットカード事業も行っていたりして道内の百貨店としては圧倒的な知名度があった。日常会話の中では正式名称の「丸井今井」とフルネームで呼ばれることはほとんどなく、短縮した「丸井」、もしくは「丸井さん」という愛称で呼ばれることが多かったと記憶している。

俺は1996年に北海道から上京したのだが、上京してからも新宿などにある「マルイ」は北海道の「丸井今井」と同じデパートである、と勘違いしていた。ここまでだったら当時の北海道出身者の上京あるあるネタだが、たぶんほとんどの道民は実際にマルイに足を運んだり、看板を見れば「丸井今井」とは違うデパートだと気づくはずだ。

何しろ東京のマルイと北海道の丸井今井とでは、看板のロゴマークがまったく違う。東京のマルイは例の「○I○I」なのに対し、丸井今井ロゴマークは大きな円い輪の中に漢字の「井」が入った昔ながらの屋号か、もしくは丸井今井のイニシャル「M」をリボンのようなイメージでデザインしたロゴの下に漢字もしくはアルファベットで「丸井今井/marui imai」と入っているもので、まったく似ても似つかないのだ。

 

http://www.imhds.co.jp/company/history_maruiimai.html より

 

多くの北海道出身者はこのロゴマークの違いで自分の勘違いに気づくと思う。しかし俺は東京のマルイのロゴマークを見て

「さすがは丸井さん、東京では都会風でモダンなロゴデザインに変えているんだな。ターゲットにしている客層も若者中心みたいだし、ブランド戦略も柔軟に変更していく、というわけですか……」

と、一人合点していたのだった。また、東京のマルイの「○I○I」という、一見して読み方がわからないロゴも、「まる・い(○I)」と「い・ま・い(I○I)」の読みを合体して抽象化したデザインなんだな、と勝手に納得していた。

2004年に吹石一恵がマルイのイメージキャラクターになったCMが流れてちょっと話題になったと思うのだけど、その頃に帰省して丸井さんに行ったときに「あれ、こっちでは吹石一恵のポスターとか店頭ディスプレイがないんだな」とちょっと訝しんだのは覚えている。

 

96年に上京して以来ずっと勘違いしていて、やっと気づいたのは2009年になってからだ。その年、北海道の丸井今井が経営不振から倒産し、三越伊勢丹ホールディングス傘下で事業再建を行うことになったというニュースが報じられた。俺は職場で日経新聞を片手に「丸井さんも大変だなあ、新宿のマルイもどうなるんだろうね? 伊勢丹がすぐ目の前にあるから、一緒になったりするのかな?」と、同じく北海道出身者の同僚に話し、えらくバカにされたものだった。

上京以来、そのときまで13年間、マルイの店舗に行ったことも何度かあったのに、1ミリたりとも自分の思い違いを疑ったことはなかった。そういう思い込みの恐ろしさというのはあるのだ、ということは折に触れて警鐘を鳴らしていきたい(個人的などうでもいいことを大仰にまとめる結び)。