NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

ガールフレンド・フロム・ヘル、そして寺田農のド変態インテリ悪役

いきなりこんな話をされても困ると思うが、ときどき「ガールフレンド・フロム・ヘル」というワードが頭の中にフラッシュバックすることがある。まあ、そんな話をいきなりされても困るとは思うが、とりあえず聞いてくれ。

これ、『ガールフレンド・フロム・ヘル』というタイトルのC級ホラーコメディ映画が80年代末にあったわけなんですが、俺はこの作品を見たおぼえがまったくない。ないんだが、テーマ曲だけは明らかにどこかで聴いたおぼえがあるのだ。なんだそりゃ。特にサビの「ガールフレンド・フロム・ヘール! ハッハー! Na-nanananana」みたいなところは確実に覚えている。どこで聴いたんだろうか。というか見たことあるのかこの映画。見たとしたらまあ、テレビの深夜映画枠なんだろうが、本当にまったく覚えがないんだよ。こんな映画なんですがね。

 

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うーん、なんとも80年代末という感じだ。テーマ曲はこれ。

 

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なんかこう、誰かがどこかでカバーしてそうな雰囲気はあるけど、この映画はアメリカのほうでも「カルト・クラシックとして今でも一部には有名」みたいな扱いでは別になくって単純に無名の映画みたいだし(そもそもアメリカでも劇場公開されてなくてビデオスルーだったようだ)。なんだろうこれ。

もしかしたら、当時レンタルビデオで見た他の映画の冒頭で予告編が流れたのを見たのかもしれない。それでテーマ曲の妙にキャッチーなサビの部分だけ頭に残っているのかも。いやわかんないな。やっぱり当時のTV深夜映画で見たのかな。

 

画像引用元:https://k-plus.biz/archives/29975

こちら当時のビデオジャケット。このジャケットにもあんまり覚えがないので、自分でレンタルして見たってことは多分ないはずなんだが……。

 

まあなんだかいろんなものがぼんやりしている。断片は確かに覚えているんだが、しかしその大元がなんだったのかはまったく思い出せない……ということがつい最近、もうひとつあった。

この3月に寺田農が亡くなってしまった。誰しも映画やドラマをある程度の本数見ていると、作品本編の面白さとは無関係に「この人が脇でちょっと出てくると何か得した気分になる」という役者ができるものだが、俺にとって寺田農はまさにそのようなバイプレイヤーの一人だったので悲しい。

で、寺田農というと俺はなんとなく「インテリのド変態悪役」を演じることが多いというイメージがあった。が、改めてフィルモグラフィーを振り返ると別にそうでもないんだよな。インテリの悪役はいっぱいあるけど、毎度毎度そこにド変態属性が付くかっていうと別にそんなことはない。ていうかむしろぜんぜんそんなことはない。何らかの昏い色気のようなものを感じさせる(悪)役、あるいは劇中で直接的に性的な行為をする役はすぐ挙げられるけど、でもやっぱり「変態」っていうのとは違う……。

 

上記のイメージはたぶん高校生くらいのときに見た何かの映画かVシネマでの役からきてるんだが、それが何という作品なのか思い出せない。ナチス将校風のコスプレして黒い口紅をした寺田農が、目隠し緊縛した女性の顔にグラスに入ったワインをツッと流しかけて「これは何かね?」「……おしっこです」と言わせるというシーンがあるやつ。こりゃど直球でド変態だわ。だがその作品が思い出せないのだ……こんな強烈なシーンがあるやつなのに……たぶん池田敏春のVシネマ関係か、あるいはその流れでの石井隆の何かか、もしくは実相寺昭雄のAV作品か……だが決定的なことは思い出せず、Blueskyのほうで「識者の情報を求む」と書いた。

親切な方々からいろいろ助言いただいて、改めてallcinemaで寺田農のフィルモグラフィーをひとつひとつ確認してたら……急に頭の靄が晴れて思い出した! 高橋伴明の『DOOR II Tokyo Diary』(1991)ですわ。filmarksに投稿されたレビューに件のシーンへの言及あるのでほぼ確定だと思う。たぶんTVの深夜映画枠でやってたのを見たんだろう。金曜ロードショーで『DOOR』一作目のほうを放映したときがあって、そのあとしばらくたってから深夜映画枠でやってたんじゃなかったかな確か。うーんこれですっきりだ。

『DOOR II Tokyo Diary』はVシネマで当時リリースされたきりDVD化等はされてなかったんだけど、ちょうど昨年、デジタルリマスター版が劇場公開されていた。YouTubeにUPされてる予告編でも件のシーンがちょっとだけ映っている。このタイミングでソフト化とか配信とかしないかな。

 

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GMOコインのラジオCMの虚無っぷりはちょっと気になる

https://www.youtube.com/watch?v=oVo2ZIIQAhk より

 

最近TBSラジオあたりを聴いてるとよく流れるGMOコインのラジオCMがすごい。同社の今流れてるテレビCMから音声だけを抜き出してるのだが、「ジージージーエムオー、ジーエムオー、コイン!(フッフッフー!)」「スギちゃんだぜぇー、ワイルドだろぉ?」という会社に関しても提供サービスについても何も説明していない音声が流れ、後は暗号資産取引の注意事項に関するアナウンスが流れるだけ。注意事項部分がCM全体の半分くらいの尺を取っているので、本当に情報量が少ない。

ちなみにテレビCMはこんな感じ。映像のノリと勢いだけで見せる中毒性狙いのイメージCM的なものでそもそも具体的な情報量は少ないのだが、ここから音声だけを抜き出すとほとんど何も残らない。ついでに言えば、契約の関係か抜き出されてるのはスギちゃんだけでアンジェラ芽衣は省略されているので、掛け合いにもなっていない。

 

 

注意事項部分はたぶん何かの自主ガイドラインとか経産省通達とかで必ず広告内で告知しないといけない情報なのだろうが(薬のCMのように)、テレビCMだと最後にテキストずらずら流した画面一枚挟めばいいところをラジオCMだと音声なのでそうはいかず、読み上げるぶんの尺を確保しないといけない。そのためPRに割ける時間が少ししか残らず、ラジオ用の独自音声素材もないので結果として虚無のCMになった、みたいな感じだろうか。よくわかんないけど。

だがその虚無っぺえ感じ(と音声それ自体としては無闇矢鱈と景気がいい感じ)が暗号資産ビジネスそのものに漂う虚無いイキフンへの意図せざる批評性を帯びてしまっているようにも思えるのだ。思えるのだーダッダッダン。そういえば一昨年あたりに同じくラジオで流れまくっていたオッズパークのCMでも似たような感想を持った。

 

 

こっちも構造としてはGMOコインと同じだ。テレビCMは「妙にクセになる」狙いのサービス名連呼刷り込み型の作りで、ラジオCMはその素材から抜き出した音で再構成したもの。ただし、GMOコインとは違って注意事項読み上げみたいのはないから、内容と尺はテレビとラジオでほぼ変わらない。

で、このCM、テレビで(つまり映像で)見るとそこまでは気にならないんだけど、ほぼ同じ内容のはずのラジオCM版を聴くと、安っぽく狂騒的なパーティ感にクラックラするのだった。オーッズオッズオッズ…という女性複数のコールが、バニラの街宣カーのような倫理観低めのプレジャーバイブスを意図せず生み出してしまっているようで味わい深かった。

 

まあそれはそれとして、こんな虚無っぽいラジオCMで大丈夫なのかと問われれば、このCMとは別にGMOコインはラジオ番組へのペイドパブ(番組内の1コーナーだけスポンサードして暗号通貨関係の話題を取り扱ってもらったり、のような)もやっているようなので、それとセットでということなんだろう。

ラジオリスナーってわりと、番組単位で聴くというより同じ局を流しっぱなしにしてることが多いので(お店や職場などで流す場合は特に)、どっかの番組でペイドパブやって違う時間帯のスポットで社名/サービス連呼のCMやって……という感じでもそれなりに連動効果はあるということなのかもしれない。よく知らんけど。

90年代中盤のダイナミズム

ラジオから藤井隆プロデュースでフットボールアワー後藤輝基が出すカバーアルバムのMixが流れてきていい感じだったんだけど、途中で「カーニバルは終わらない」という印象的なサビの曲があり、この曲知ってるんだけど元はなんだったっけ……と即ググった。宝生舞「Carnival」(1997)だった。さすが女優の唄う曲に深い思い入れのある藤井隆ディレクションだ……。

 



この曲は当時どこで聴いたのだったか。そもそも宝生舞がCDを出していたことを忘れていたのだから、曲だけどこかで流れてきたのを聴いたのだろうか*1YouTubeの映像は「HEY!HEY!HEY!」でのものかな。匂い立つような1997年の空気感だが、宝生舞かっこいいな!

 


1994年にはこんなだった宝生舞が、1997年にはあんな尋常ではないかっこよさとダルさを身に纏う、これこそが90年代中盤のダイナミズムや! という感じだ。

思わず続けてYouTubeから貼ってしまうが、

 

 

1994年にこんな感じで多幸感溢れるアイドル歌謡広瀬香美/筒美京平)だった内田有紀が、次の年には

 

 

「90年代」のカリカチュアじみてコムロナイズされていくのもまた90年代中盤のダイナミズムという感じである。

というか、ベタな話ではあるけど1994年までと95年以降では明らかにそこで空気感が変わってしまう、というのはやはり同時代の記憶としてもそうだし当時のこういう映像を振り返ってみてもそう感じるものはあるな。90年から94年まではバブル景気末期〜その残滓・残り香があり、浮ついた空気というか、風邪の治りかけの微熱のせいで根拠のない楽観主義みたいのを抱いているような気分というか、まあなんかそういうのを、今の目線からは感じることがある。

これくらいの時代のフジテレビの若者向けドラマをCSとかU局で再放送しているのをけっこう見てしまうのだが、まあ、なんとも言えない気分で胸が一杯になってしまうんだよね。たとえば『いつも誰かに恋してるッ』(90年1月-3月)と『いつか誰かと朝帰りッ』(90年10月-12月)とか、「ボクたちのドラマシリーズ」(92年、93-94年)の諸作とか、『じゃじゃ馬ならし』(93年7月-9月)とか。

この流れでいくと当然ながら『17才-at seventeen-』(94年4月-9月)がまた見たいのだが、これは未成年の飲酒・喫煙シーンがガンガン出てくるドラマなので(いわゆる「不良行為」的な描き方ではなく、ごく自然に飲酒・喫煙する)当時も普通に問題になってたしその後ソフト化も再放送もされていないっぽいのでやっぱさすがに難しいのかな。楽しいドラマだったと思うんですけどね。

*1:調べたら日テレの深夜ドラマ枠「Shin-D」のエンディングテーマだったらしいが、その枠のどれかの作品のEDだったのか枠共通のEDだったのか判然としないし、俺はその枠のドラマを見ていた記憶がない。

HPの「Wolf Security」Web CMはおっさんASMR的に最の高なので見ろ! 今すぐ見ろ! という話

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これ、広告キャンペーン期間が終わったら消されてしまうかもしれないから早めに見てほしいが、今やっているヒューレット・パッカードのセキュリティソリューションのWeb CMがいい。

最近ちょくちょくTwitterの広告で流れてきて、見るとはなしに見ていたら妙にクセになってしまった。サイバー犯罪者が出てきて、テレワークで仕事しているビジネスパーソンの家庭や、出社抑制でガラガラになった会社で孤独に作業する情シスの部屋に「侵入」し、カメラ目線で「HPのセキュリティソリューションが入ってたら俺も悪さはできないんだが……」的なことをうそぶく、といった内容だ。

 


www.youtube.com

 

このサイバー犯罪者、一見小綺麗で穏和なインテリ初老男性っぽい風体だが、内に秘めた暴力性や野蛮さがその所作に時折垣間見えるといった役作りで、とってもいい感じだなー、これはみんな好きな感じの悪役造形だろう、と思ってたらなんとクリスチャン・スレーターだった。iPhoneの小さな画面で見てたから最初は気づかなかったよ。どうやらドラマ『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』でスレーターが演じたキャラクターをイメージした配役らしいですね。このドラマ、Amazon Prime Videoの視聴キューに入れたまますっかり忘れていたので、今度見てみるか。

さらに、日本語吹替は渡部篤郎がやってて、近年の「食えない悪役」をやるときに見せるあの独特のクッチャクチャした言い回し&喋り方でやってて、これはもう最高としか言いようがない。おっさんASMR風味を強く感じるので、おっさんASMRが好きな人はすぐに見ろ!

渡部篤郎のこの独特のクッチャクチャ喋り芝居、俺が最初に見たのはドラマ『銭の戦争』での消費者金融社長役のときだったが(たぶんその前からいろんな作品でその萌芽は覗える)、近年はTVで見るときはだいたいこの芝居なような気さえする(別にそんなことはないんだが)。あ、吹替が渡部篤郎だという公式の情報はどこを見てもないんだが(HPのキャンペーンサイトにも、スターダストプロモーション渡部篤郎プロフィールページにもない)、この声とクッチャクチャ喋りで渡部篤郎じゃなかったらそれはもう詐欺だと思うので渡部篤郎だと思います(ていうか渡部篤郎じゃなかったらCMディレクターはなんでこんな渡部篤郎のクッチャクチャ喋り芝居に寄せた演技を指示してるんだって話だ)。でも、全然違う人だったらごめんね。ごめんなさい。

まとめとしては、クリスチャン・スレーターのいい感じのサイバー犯罪者芝居に渡部篤郎のクッチャクチャ喋り吹替がついておっさんASMR味がたいへん濃厚なのでおっさんASMR好きは今すぐ見ろ! ということです。たぶん広告キャンペーン終わったら消えちゃうので。以上おしまい。

 

『おんぶおばけ』のオープニングテーマはすごい

妻が何かの話の流れで「あれだ、おんぶおばけみたいな……」というようなことを言うので、何だそれ、子泣き爺みたいなものかと思っていたら、まあ妖怪の一種ではあるんだけど水木しげる絡みというわけではなく、そういうタイトルのアニメがあったらしい(皆さんはご存知かしらん?)。

なにそれ! 俺は今まで一度も聞いたことがない! そんな変なタイトルのアニメがあるのか? と驚いていたら、YouTubeにあったオープニング映像を見せてくれた。1972年放映のTVアニメで、『フクちゃん』の横山隆一原作なのか、なるほど確かに絵柄が横山隆一だ……と思いながら見てたら、いかにも70年代の子ども向けアニメの主題歌然としたメロディに、突如として狂人の奇声のような歪んだギター? シンセサイザー? が被さる超アヴァンギャルドなものでマジでびびりました。なんだこりゃ。

 


おんぶおばけ OP

 

主題歌フルVer.


1972 おんぶおばけ・主題歌

 

『おんぶおばけ』主題歌を作曲した三保敬太郎はジャズピアニストやレーシングドライバー、俳優、監督の経験もあるというなんか異色の作曲家・編曲家で、なんと「11PM」のあのテーマ曲の作曲者でもある、というのを調べてほえーと思いました*1

 


1965~ 11P


11PM (東京イレブン) 最終回のオープニング

 

11PM」は最後の半年くらいをギリ見てた(その頃の自分の年齢的にあまりよろしくない番組ではあるが、ちょうどその時期に自分の部屋にお古のTVが設置されたのだ)。東京イレブンより大阪イレブンのほうがなんか面白かったような気がするんだが、「トゥナイト」とごっちゃになってる気もする。映画コーナーで田山力也が出てたのって「トゥナイト」のほうだっけ? 「11PM」の枠の後継番組である「EXテレビ」はかなり見てたなー。

と、初めて知るものからいろいろなものを思い出したりしました。何を見ても何かを思い出す。

 

11PMのテーマ

*1:と、書いたが、あの「11PM」の……と言っても今はもうほとんど通じなくなってるかもしれないな。

Oui Oui「Thinkin' bout you」

 

寺本秀雄氏のTweetで知って聴いてみたのだが、あーこれはなんかいい。なんていうか、ある時代のアニメのエンディングテーマっぽい感じ、アトモスフィアーがある。このアトモスフィアーは、もうなんていうか「ある」としか言えないやつで、ぶっちゃけ「Emoい」と言うのとほとんど変わらないようなもんなんだが、まあエモだ。

ところで『ブギーポップは笑わない』が再アニメ化ということで、2000年の前回アニメ化時のことを思い出す人も散見された。そんでみんなだいたい言うけど、前回アニメ版のオープニング(スガシカオ「夕立ち」)は、映像の感じも相まって最高にエンディングテーマっぽい感じで良かったよね。オープニングなんだけど、エンディングだとしか思えないアレがある。アレとはつまりアトモスフィアーなんだが。

なんかこうね、「アニメのエンディングテーマっぽい感じ」というのは、ある一定の年齢層に刺さる気がするんだよな。いろいろ探ってみたい。

ウルトラセブン「超兵器R1号」と円谷幸吉

前から気になってるのだが、『ウルトラセブン』第26話「超兵器R1号」(ギエロン星獣の回)でモロボシ・ダンが言う名台詞

「それは、血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ」

は、円谷幸吉が自殺した事件を踏まえたものだったのだろうか。

父上様母上様 三日とろろ美味しうございました。干し柿 もちも美味しうございました。

で始まる、あの有名な遺書を残して自死を選んだマラソン選手のことである。

円谷が自殺したのは1968年1月9日、「超兵器R1号」のテレビ初回放映が68年3月31日……ということを考えると、事件後に脚本を書いたというのは時間的に微妙な気がする。

が、仮に偶然の一致だったとして、当時の視聴者は円谷の自殺を連想せずにはいられなかったのではないか。円谷は自衛官でもあったわけで、その点でもこのエピソードのテーマに絡めて連想が働きそうだ。

エピソードそれ自体の問題提起とともにその連想が強烈に働き、いわゆる「名台詞」として人口に膾炙するのに拍車をかけたのでは……と前から想像してるのだけど、どうでしょうね。ある種の無意識の受容史として。

まあ当時の視聴者、というのはそのほとんどが子供だったわけなので、見てすぐに円谷選手を連想したかというとそうでもないかもしれない。でも長じてからもウルトラが好きで拘りを持ちづけた者たちが(つまり特撮オタクたちが)、偶然かもしれないとしてもその時代的連関(に、見えるもの)に気づかないわけはないと思うんだよね。