NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

『君の名は。』メモ

今更ながら『君の名は。』を見てきた。新海誠をずっと見てきた人には色々感慨があるのだろうなと思うが、残念ながら俺は『ほしのこえ』くらいしかまともに見てないので、今作もウェルメイドな佳作といったくらいの感想だ。以下、つれづれにメモ。

  • 物語上の大きな仕掛けについて知っている状態で見たからかもしれないが、アヴァンタイトル→オープニングで勘のいい人ならなんとなく気づく演出があったような。それがなかったとしても、劇中でその仕掛に直接的に“言及”している小物が画面の端に写るシーンが2箇所ある。
  • バランスとしてTVアニメ3話分くらいの時間配分。特に第1話にあたる冒頭30分強くらいはまさに「次が気になるTVアニメ第1話」といういった配分で、アヴァンタイトルで気を持たせてセンスのいいOPへの入りでエモーショナルに煽り(タイトルロゴの出し方は特にいい)、そこから一旦肩透かしするかのように抑えたトーンの演出へ移行し、そしてとうとう入れ替わりに気づいた2人→ドタバタのモンタージュに被さる曲(EDとか次回予告っぽい)……と、とてもテンポがよい。
  • 本編始まる前に5本くらいあった他の映画の予告編を見ていたので尚更はっきりわかったが、お話的にはここ数年くらいの日本映画、特に若者向け恋愛ものでよくある「愛し合う若い2人のどちらか片一方が、難病やら超自然的現象やらSF的な何かによって記憶を失ったり短期的に時間を遡ったりして巻き起こる悲恋もの」のフォーマットに忠実。つまり男女の「すれ違い」が物理的なものではなく、記憶や時間の流れによって成される。これは携帯電話やネットワークの普及によって現代を舞台にした物語で物理的/場所的なすれ違いを描くことが困難になっていることとも関係しているだろう。
  • で、そのフォーマットをアニメでやるので実写よりもスケールの大きな見せ場を作れた、という感じだ。それとは別に、都会と田舎/田舎の伝統行事と美しい自然風景などの地方自治体タイアップ映画的な要素も押さえている(別にタイアップではないけど)。
  • そういう意味でも、「今の日本映画」のメジャー感を強烈に感じる作品だった。誤解を恐れずに言うなら、アニメ映画に独特なハイコンテクストなところがほとんどない(細田守の映画よりも)。
  • あと、描き方がああいう感じなので問題ないが、若干、諸星大二郎っぽい話だなーと思ったり思わなかったり。『妖怪ハンター 組紐カタワレ異聞』みたいな。