NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

落下しに、と彼女は言う

Compfused.com - The Never Ending Fallhttp://www.compfused.com/directlink/822/
 ビキニ姿の女性をドラッグして離すと、ひたすら落下し続ける。途中に大小さまざまのボールが浮かんでいて、落下する彼女はそのボールにぶつかったり引っかかったりしながら、それでもなお、ただひたすらに落ち続ける。
 このFlash物理エンジンっぽいものののデモ(とジョーク)を目的に作られたものなのだろうが、たぶん少なくない数の人がこれを「不気味なもの」と捉えるだろう。だって、落ちていく彼女は水着を着ているけれども、明らかに屍体に見えるんだもの。人間の身体の関節が、落下している最中に球形の障害物とぶつかったらどのように反応するかをそれっぽく見せているが、どんなに痛々しい衝突をしようとも、彼女の四肢は常に脱力し、だらりとぶらさがっている。球体にぶつかったときに流血したり身体が損壊したりはしないものの、彼女はもうずっと前に死んでいて、その屍体だけがただ永遠に落ち続ける(そしてたまに、我々のマウスの気まぐれなドラッグ&ドロップによって宙吊りにされる)……そんな悪夢のような光景に見えないこともない。
 以前、Havokか何かの物理エンジンの技術デモを初めて見たときにも、これに似たような不気味さを感じた。そのデモでは、オブジェクトの物理的な反応と人間の関節の動きの自然さをアピールするために、パチンコの台のように杭が突き出た壁面をドラム缶と特殊部隊の格好をした人間が延々落下し続ける、という光景が繰り広げられていた。杭に引っかかると、ちゃんと「ドラム缶」や「人間の屍体」らしい反応をする……ドラム缶はゴンゴンと弾かれ、屍体は腕や脚をぶらぶらさせながら引っかかり自重でまた落下する、というような反応だ。
 なるほど、これはよくできてるな、とか感心する前に、気持ち悪いというか、なんかこれはとても冒涜的な映像だなあと感じた覚えがある。その後、FPSなどのジャンルで、そういった物理エンジンによってシミュレートされた屍体(壁や机や障害物に、不自然じゃないポーズでもたれかかったもの)をよく見るようになったが、デモを見たときのような気持ち悪さは微塵も感じなかった。ゲーム中の文脈では、それはただの敵の屍体でしかないからだ。だが、このFlashの彼女や技術デモの特殊部隊員の「屍体」は、そういった文脈をまったく持たず、そして意味もなく永遠に落ち続けたり障害物に引っかかったりする。まったくひどい扱いだ。そのシチュエーションは滑稽だが、どう見ても「屍体」なので笑うに笑えないというか。ある種のシックジョークみたいな。
 それなりのリアルさを持った人間の姿のモデルが、特に意味もなくひどい扱いを受けるという光景は、やはり何か心をかき乱すものがある。このFlashみたいなので落ちゲーとか作れないですかね(ひどい)