NGM+その他の欲望

Nightcap Gamer's Memopad, そしてその他諸々についてのサムシング。

ハルヒ→春樹→ピンボール



 上記更新のピンボール台の写真に至るまでの流れ。
 思うところあって、今年の春先くらいからハルヒの原作のほうを立て続けに読んでいた。以前、アニメが放映される直前だったか放映中だったか忘れたけど、話題になってるみたいだしたまにはライトノベルでも読むかと一作目の『涼宮ハルヒの憂鬱』を読んだことがあったのだが、正直なところまったくノれずそれっきりになっていた。ブームがだいぶ落ち着いて以降にアニメ版をDVDで見て、まあなんとなくいろいろと、原作のほうも続き読んでみようかなと思って読んでみたら、二作目以降はけっこう面白く読めたので、続けてみたわけだ。
 以前プレイして面白かったPS2魔法先生ネギま! 1時間目 お子ちゃま先生は魔法使い!』を開発したディベロッパーがハルヒのゲーム(PS2涼宮ハルヒの戸惑』)も作ってて、しかもその内容が「同人ゲームのプロダクトマネジメント」で異様に複雑なシステムになっていてなんかすごい、版権タイトルとは思えない魔システムだ……みたいな話を聞いたので思わず購入したのもこの頃だったのだが、まあこれは、未だに手を付けず積みゲーになっている。そういや近々廉価版が出るんだっけ……。で、積みゲー消化の最終奥義「自分がやる暇ないので先に他の人に無理矢理やらせて感想だけ聞く」をシュバッと発動させて妻の人にプレイさせ感想を聞いたところ「無理むり、攻略本ないとキツイ」とのことだった。ほあー。
 ああ話がずれた。で、ハルヒ読んでたら、この主人公の一人称の小賢しさとか韜晦とか鼻につく感じ(いい意味でね!)を面白がれるなら、初期の村上春樹の小説もその延長線上で読んでみたらどうだろう、春樹ラノベっぽいよねセカイっぽいよねー的なアレで(いやその反対だと思うが)と思ったので15年ぶりくらいで『風の歌を聴け』を再読したのだった。結果、どこからどう読んでもライトノベル的な文体としか読めなくなって想像以上の効果に驚いた。これはびっくりだ。続けて『1973年のピンボール』も再読。こっちはあまりラノベじゃないな。たぶん主人公パートと並立する鼠パートのしょっぱいお話があるからだろう。だがあの双子だけはガチでラノベキャラだなー、なんなんだこれは……と今更ながらに唖然としているところでピンボールだ。例のスペイン語講師が語る、ギルバート&サンズというピンボールメーカーの栄光と盛衰、そして幻のピンボール台……もちろんそのメーカーは架空の存在で、つまりこの部分の記述は偽史なのだが、しかしゲーム産業に関する偽史——小説や映画の中で時々見受けられる、架空のゲームに関する記述——僕はそれが大好きだ。特に、まったくのデタラメではなく、正史の中に巧妙かつ大胆に挿入される偽史、なかなかないが、たまにそういうのに出くわすと嬉しくなる。『1973年のピンボール』を初めて読んだ高校生の頃にはあまり気にしていなかったが、今読み返すとこの部分はたまらなく魅力的だ。引用しちまおう。

「ところでご存知のようにアメリカの、つまり世界のということですが、ピンボール業界は四つばかりの企業による寡占状態にあります。ゴッドリーブ*1、バリー、シカゴ・コイン、ウィリアムズ……いわゆるビッグ・フォーですな。そこにギルバート社が殴り込んできた。激しい戦いが五年ばかり続きました。そして一九五七年、ギルバート社はピンボールから手を引きました」
「手を引いた?」
 彼は肯きながら残りのコーヒーを不味そうに飲み、ハンカチで口元を何度も拭いた。
「ええ、敗退したわけです。もっとも会社自体はもうけたんです。中南米輸出でね。でも傷口が大きくならないうちにということで手を引きました。……結局ピンボール作りのノウハウはひどく複雑なのですよ。熟練した専門技術者が何人も要るし、それを統率するプランナーが要る。それに全国をカバーするネットワークが要ります。部品を常にストックしておくエージェントが要るし、どこの機械が故障しても五時間以内とんで行ける数の修理工もいる。まあ残念なことに新参のギルバート社にはそれだけの力はなかった。そこで彼らは涙をのんで引き下がり、それからの約七年間自動販売機やクライスラーのワイパーを作り続けていたわけです。でも彼らはピンボールをあきらめはしなかった」
 彼はそこで口をつぐんだ。上着のポケットから煙草を取り出し、テーブルの上で先をとんとんと叩いてからライターで火をつけた。
「あきらめなかったんです。彼らにはプライドがあったんですな。秘密工場で研究は進められた。ビッグ・フォーを退職した連中をこっそりと引き抜いてプロジェクト・チームを作ったわけです。そして莫大な研究費を与えてこう命令した、ビッグ・フォーのどんな機械にも負けないものを作れ、それも五年以内に、とね。一九五九年のことでした。(後略)」

 たまんねえ! ということでこの時点で興味はピンボールへと路線変更された。折りよく、とよ田みのるFLIP-FLAP』の単行本が出たのもこの頃だ。このマンガ、帯では「ピンボールブコメ」と謳われていてそれは間違っていないのだけど、ラブコメ成分よりも「ピンボール」成分が超濃厚で熱い。一言で表せばボーイ・ミーツ・ガール経由でボーイ・ミーツ・ピンボールな物語。主人公は意中の女の子の誘いでピンボールにのめり込むようになるのだが、ゲームセンターを舞台としたフィクションの王道的展開であるところの「ストイックに勝負もしくはハイスコアの世界に没入し集中力が極限まで高まったそのとき、静寂が訪れる」、スポーツで言うところの“ゾーン”に入った一瞬の描き方が素晴らしい。これを読んでちゃんと実機でピンボールを遊びたくなる人はきっとたくさんいるに違いない。それだけの力を持ったマンガだ。
 そんなわけでその熱量にあてられて、ピンボールを置いてあるゲームセンターを探していたわけだが、やっぱりなかなか見つからない。池袋の新文芸座の向かいにあるゲーセンには一台置いてたよな(少なくとも一年ほど前には)、という記憶はあるんだが、できれば自分の家の近くとか、願わくば仕事帰りに立ち寄れるところにあればいいんだけど……。
 ・日本全国ピンボール台設置情報
 このサイトの情報を見ながら探して、行ってみたらもう撤去されてたり、ということが何度かあったのだが、やっと今日見つけた。ていうか最初にここ見に行けばよかったんだよな。京急川崎駅前のDICEの地下二階にあるゲーセンに二台。よしよし。
 ……と、顛末を書いてたら意味もなくダラダラと長くなった。まあそんなところで、これからは暇を見つけて行ってみよう。あと、サターンの『ラストグラディエーター』も久々に起動してみるか。

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

*1:原文ママ。正しくはゴットリーブ(Gottlieb)。