NGM+その他の欲望

日々のサムシングについてのスクラップブック。

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これ、自分でもすっかり忘れてたんだけど、俺は学生のときに浜崎あゆみとちょっとだけ交流があって、浜崎あゆみのファーストアルバムリリース時の伝説的なプロモーション、渋谷タワーレコード入り口に設置された巨大ガチャガチャに全身に金粉を塗ったあゆがCDの山と共に一日閉じ込められるというあれ、あのプロモーションのとき、俺はイベント設営のバイトしててたまたまその現場に回され、巨大ガチャガチャの中の浜崎あゆみに1時間ごとにドリンクを手渡す係をやっていて、そのときに渡した紙パック入りの飲料(「僕たち飲むならピクニック!」というCMのあれ)のことは今でも妙に覚えているのだが、ガチャガチャの中に入っていた全身金粉を塗った女性が浜崎あゆみだったという認識はなく(当時はまだ浜崎あゆみも有名ではなかったので)、だがその後しばらくたってから、音楽誌のライターをやっていた先輩の手伝いで浜崎あゆみのインタビューに同席する機会があって、俺は件のバイトのことはすっかり忘れてたんだがインタビューの途中でデビュー時のプロモーションの話になり、突然あゆが俺を指差し、え、ピクニックの人じゃない? みたいなことを言って俺もやっと記憶が繋がって、あ! と言ったあと一瞬間を開けて2人でゲラゲラ笑うということがあり、まあ別にそれだけの話であれからもう四半世紀近くもたってそのこともまた忘れていたんだが、先日、在宅勤務で気が滅入って、いい天気だし気分転換に散歩でもしよう久しぶりに、と思って近所をぶらぶらしてるとき、石材屋の横を通りかかったら浜崎あゆみがいたのだ、マネージャーらしき女性と大きな御影石の墓石の前に立っていた浜崎あゆみを見て俺は急に四半世紀前のバイトのことやインタビューの席でのことを思い出し、あ、ご無沙汰してますとモゴモゴと挨拶したのたが当然のようにあちらは無反応で、まあそりゃそうだと、思いつつ石材屋会館に入って二階に上がっていく途中で例の音楽ライターの先輩に会い、久しぶり、今あゆのインタビューやってるんだよ、ロングインタビューで、毎週この石材屋でインタビューしてるんだ、今日で二週目だぜ、へーそうなんですか、じゃあ来週も来ますね、という会話をしたんだ、そう、俺は浜崎あゆみと昔ちょっと交流があったんだよなあ、交流というか接点か、まあ自分でもぜんぜん忘れてたんだけどさ、という話を、先日目が覚めてから15分くらい妻に話していた。俺は浜崎あゆみのことは詳しくないんだが昔こんなことがあってと話してる途中で、虚構と現実の皮膜が、境界線が曖昧になるのだという思いが強くなり、強くなった瞬間「虚構と現実の皮膜が、境界線が曖昧になるんだよねえ」と口に出していた。

 

A BEST